島津久宝 (加治木家)

島津久宝：激動の時代を生きた薩摩藩士

島津久宝は、幕末から明治へと続く激動期に、薩摩藩の中枢で重要な役割を担った人物です。嘉永5年（1852年）、島津久長の子として誕生しました。幼名は岩松、通称は又八郎、兵庫と称しました。

幼少期から薩摩藩の伝統と文化に触れながら成長した久宝は、安政4年（1857年）、まだ幼少であったものの、父の死去により、家督と加治木領を相続することとなります。このことは、彼に大きな責任と重圧を課すこととなりました。当時、薩摩藩は国内情勢の激変に直面しており、若き当主は藩の未来を担う存在として期待を集めていました。

明治維新を迎えると、日本の社会構造は大きく変化します。久宝は、明治2年（1869年）の版籍奉還により、代々治めてきた加治木領を政府に返還し、鹿児島の屋敷に移住しました。これは、新たな時代の到来を象徴する出来事であり、久宝自身もまた、時代の流れに順応していく必要性を痛感したはずです。

領地返還後も、久宝は藩の秩序維持や社会安定に貢献すべく尽力したと推測されますが、具体的な活動内容については史料が不足しており、詳細は不明な点が多く残されています。しかし、彼の生涯は、時代とともに変化する社会情勢の中で、伝統と革新のはざまで揺れ動きながら、責任ある立場を全うしようとした一人の藩士の姿を示すものと言えるでしょう。

明治20年（1887年）8月14日、島津久宝は亡くなりました。享年35歳でした。彼の死は、家系や地域社会に大きな影響を与えたはずです。家督は妻の健が継承し、その後、相良頼基の子である基直（島津久賢）を婿養子として迎え入れました。これは、加治木島津家の存続と繁栄を図るための重要な決定でした。

久賢は、後に久宝の明治維新への貢献を認められ、明治30年（1897年）に男爵に叙されています。これは、久宝の功績が後世にまで評価された証と言えるでしょう。

久宝の生涯を振り返ると、彼は激動の時代に翻弄されながらも、責任を全うし、家系の存続に尽力した人物であったと言えるでしょう。彼の生き様は、現代社会においても、多くの示唆を与えてくれるはずです。

親族関係

先妻：富子（島津貴柄長女）
後妻：健（島津久徴六女）
長女：直（島津久賢室、母・健）

参考文献

「加治木郷土史料」
* 霞会館華族家系大成編輯委員会編『平成新修旧華族家系大成』上巻、社団法人霞会館、1996年。

もう一度検索