相良頼基

相良頼基：人吉藩最後の藩主、激動の時代を生きた生涯

相良頼基（さがら よりもと）は、肥後国人吉藩の第15代、そして最後の藩主です。幕末の激動期に藩主として藩政を担い、西洋式軍隊の導入や戊辰戦争への参加などを経験しました。

生涯

天保12年（1841年）に第13代藩主・相良頼之の四男として生まれました。安政2年（1855年）、兄で第14代藩主の相良長福が亡くなった際、長福の実子である頼紹が幼少であったため、頼基が養子となり家督を継ぎました。安政3年（1857年）には従五位下・越前守に叙任されています。

軍制改革と藩内の対立

頼基の時代、人吉藩では西洋式軍隊の導入が検討され、松本了一郎を起用してオランダ式の軍制改革に乗り出しました。この了一郎を中心とするグループは佐幕派であり、「洋式派」と呼ばれました。これに対し、江戸時代初期からの伝統である山鹿流軍制を守ろうとする家老・新宮行蔵らは勤王派でした。

文久2年（1862年）に武器庫が焼失したことをきっかけに、洋式派は古きを復活させるよりも新しきを目指すべきだと頼基に進言し、認められました。これにより洋式派が優勢となり、薩摩藩からの借金をしてオランダ式軍制への改革が進められました。

了一郎失脚と軍制の混乱

しかし、慶応元年（1865年）には了一郎が頼基を廃し、正統な藩主である頼紹を擁立しようと企んでいるという噂が流れました。真偽は定かではありませんが、これに反発した勤王派は了一郎らを襲撃し、洋式派14人を上意討ちにし、主導権を掌握しました。その後、山鹿流、オランダ式とも廃止され、薩摩藩からイギリス式軍制が導入されるという混乱した状況となりました。一連の騒動により藩内の改革は遅れ、慶応4年（1868年）の戊辰戦争では、薩摩藩と協力して会津藩攻撃に加わる程度にとどまりました。

廃藩置県とその後

明治2年（1869年）の版籍奉還により知藩事となり、明治4年（1871年）の廃藩置県で免官され、人吉県令となりました。しかし、同年11月には人吉県が八代県に合併されたため、職を離れました。明治8年（1875年）に家督を養子の頼紹に譲り隠居し、明治18年（1885年）に45歳で亡くなりました。

系譜

実父: 相良頼之
実母: 慶寿院（側室）
養父: 相良長福
正室: 栄姫（上杉斉憲の娘）
継室: 永（徳大寺公純の娘）
側室: 嶋田金、菊岡美津
子女: 相良元三郎、相良豊寿丸、相良虎若、相良頼綱、相良基孝、島津久賢、相良基式、弘子、於寿々
養子: 相良頼紹

相良頼基は、幕末の激動期に人吉藩の舵取りを担い、西洋式軍隊の導入や戊辰戦争への参加、そして廃藩置県後の人吉県令としての役割を果たすなど、激動の時代を生きた人物でした。

もう一度検索