島津忠行

島津忠行とは

島津忠行（しまづ ただゆき）は、鎌倉時代中期に活躍した武将で、鎌倉幕府の御家人です。島津忠綱の長男として生まれました。

生涯

忠行は、6代将軍・宗尊親王に仕え、『吾妻鏡』には、正嘉元年（1257年）に大慈寺で行われた供養で、宗尊親王が乗る馬を引く役目を務めたことが記されています。この時、忠行は「周防三郎左衛門尉」という官職名で呼ばれていました。

弘安2年（1279年）、忠行は母である越後局から播磨国下揖保荘（現在の兵庫県たつの市）の地頭職を相続し、同地に移り住みました。彼の子孫は、この地で有力な国衆として勢力を持ち、15代目の忠長までの事績が『越前島津家文書』に記録されています。

忠行が幕府の御家人でありながら下揖保荘に移り住んだ背景には、元寇と『筑紫大道』の建設が関係しているという説があります。文永の役（1274年）の後、元の再侵攻に備えて軍用道路である『筑紫大道』が建設されたと考えられています。この道路の存在は、近年の発掘調査や法隆寺の古文書『法隆寺領斑鳩荘絵図』によって確認されており、斑鳩荘を東西に横切っていたことが示されています。

忠行が築いた立岡山城（石蜘城）の近くには、聖徳太子が朝廷から譲り受け、法隆寺に寄進した斑鳩荘（播磨国の荘園）がありました。この斑鳩荘から北へ約1kmの場所に『筑紫大道』が走っていました。

忠行は弘安6年（1283年）までに亡くなったとされ、その後、子の左衛門三郎行景と左衛門六郎忠幹が下揖保荘の相続をめぐって争ったことが、『沙弥行照播磨国下揖保荘地頭方紛失状』（『越前島津家文書』所収）によって明らかになっています。

また、『越前島津氏正統家譜』には、忠行の官職が「三郎左衛門尉・周防守」と記されていますが、正応4年（1291年）の将軍家政所下文には「亡父左衛門忠行」とあり、息子たちも「左衛門」を名乗っていることから、実際には周防守に任官されず、左衛門尉のままだった可能性が高いと推測されています。

系図上の扱い

『越前島津氏文書』に収録されている越前島津氏の系図では、忠行は忠綱の嫡子として越前島津氏の2代目とされています。しかし、同じく『越前島津氏文書』の島津氏系図では、忠綱の後継者は忠景とされており、系図上の扱いが異なっています。

『吾妻鏡』によると、忠綱には忠行の他に、四郎の忠泰、五郎の忠景、六郎の忠頼、七郎の定賢がいたことが記されています。特に、三男の忠景は歌人・御家人として評価が高く、『系図纂要』や『島津系図』などの系図にもその系統が示されています。

このように、島津忠行は鎌倉時代中期に活躍した武将であり、その生涯は史料によって部分的にしか知られていませんが、子孫は在地領主として発展し、歴史に名を残しています。

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