系図纂要

系図纂要の概要と意義

系図纂要（けいずさんよう）は、江戸時代末期に成立した系譜集であり、全102巻（103冊）から成っています。著者は『大日本野史』の著者でもある飯田忠彦と考えられており、非常に高い史料価値を持つ作品とされています。この本は、さまざまな既存の系譜集や記録を広く集め、再編集したものであり、日本の歴史と氏族の理解に貢献した重要な資料です。

編纂の背景と目的

水戸藩において『大日本史』の編纂が行われていた際、全国からさまざまな情報が集められました。その中には系図も含まれており、これを収録したのが『諸家系図纂』でした。しかし、この系図たちの中には異なる伝承が存在し、多数の異なる系図が混在しているため、整理が必要でした。そこで編纂されたのが『系図纂要』です。

この作品は、古典的な系図『尊卑分脈』を基にし、さらに『諸家系図纂』と結びつけることによって整理を試みています。先行する『寛政重修諸家譜』や『藩翰譜』、その他の文献や地誌を参考にし、宮家、藤原氏、菅原氏、紀氏、平氏、そして諸源氏など、多岐にわたる氏族・家系ごとに系図をまとめています。大名や幕臣、公家、社家も収録し、幕末までの系譜をできる限り網羅しようとしています。

編纂時期と形式

正確な成立年は明らかではありませんが、安政3年（1856年）以降の内容を持ち、著者とされる飯田忠彦が万延元年（1860年）に亡くなっていることから、この時期に編纂されたと考えられます。内容の構成としては、最初に略系が、次に詳しい本系が載せられる形式が取られています。また、本系図の中途には異説の系譜も併記されており、後世の研究者にとって有益な参考となるよう配慮されています。

文献としての特性

『系図纂要』は、特に寛政期以降の系図を収録した貴重な史料とされ、その収録内容の豊富さから「幕末期の『尊卑分脈』」とも称されています。しかしながら、原典に忠実であろうとするあまり、既存の系譜をそのまま使用しているため、実際には系図の仮冒が行われているという問題も存在します。多くの場合、自身の家が有名な系図に結びつけられる事例が見受けられるため、この点には注意が必要です。

保存と伝承

『系図纂要』の原本は内閣文庫に保存されており、東京大学史料編纂所にはその謄写本も存在します。しかし、他にも異本が存在するため、これらの文献が正確に伝わっているかどうかは不明です。複数の版が存在するため、研究の際には出典の確認が肝要です。

このように、『系図纂要』は多様な系図を整理し、後世に伝える重要な資料です。系譜の研究に資するだけではなく、日本の歴史全体の理解を深める手助けともなるでしょう。

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