島津忠長 (宮之城家)

島津忠長：戦国を駆け抜けた武将

島津忠長（しまづ ただたけ/ただなが）は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将です。薩摩国島津氏の分家出身であり、島津義久の従兄弟として、また家老、老中として重きをなしました。

生涯

島津貴久の末弟である尚久の嫡男として生まれた忠長は、幼少の頃から武芸に励み、その才能を開花させていきました。

初陣から数々の戦で活躍

天正4年（1576年）には、日向国高原城攻めに従軍し初陣を飾りました。その後も、天正6年（1578年）の石城合戦では総大将を務めるなど、重要な役割を担いました。耳川の戦い、肥後国水俣城攻め、沖田畷の戦いなど、数々の戦で功績を上げ、その武勇を天下に示しました。特に、沖田畷の戦いでは、島津家久と共に肥前有馬氏の援軍として渡海し、軍功を挙げています。

金瘡医術の伝授

天正12年（1584年）には、島津義弘から金瘡医術の伝授を受け、秘伝の医書を授けられています。金瘡医術とは、戦傷全般やそれに伴う病気、さらには婦人病までを扱う高度な医術であり、このことからも、忠長が単なる武将としてだけでなく、医学にも深い知識を持っていたことが伺えます。

岩屋城攻めでの苦戦

天正14年（1586年）には、高橋紹運が守る岩屋城攻めの総大将を務めました。激戦の末、城を攻略することに成功しますが、城兵の決死の抵抗により、島津軍は大きな損害を被りました。その後の宝満山城攻略、立花城包囲と続きますが、岩屋城での損害が響き、力攻めを断念。さらに、毛利勢の九州への進軍を知り、筑前からの撤退を余儀なくされました。この筑前侵攻は、島津軍にとって大きな失敗となりました。

豊臣秀吉への降伏と人質生活

秀吉に降伏後の天正15年（1587年）には、島津義久の上洛に同行し、そのまま豊臣氏の人質として伏見に住むことになりました。文禄元年（1592年）には、島津歳久が自害に追い込まれた際、その首が京都の一条戻橋に晒されたのを取り返しに行くという、忠義心と勇気を示すエピソードも残っています。

文禄・慶長の役での活躍

文禄・慶長の役にも従軍し、泗川の戦いでは、100の兵で10,000の明軍を打ち破り、義弘の窮地を救うという神業的な活躍を見せました。これらの功績により、宮之城領主に任命され、祁答院も領地として与えられました。

関ヶ原の戦いと晩年

帰国後、慶長4年（1599年）の庄内の乱にも参陣。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、小西行景の援軍要請に応じ、加藤清正の家老が守る佐敷城を攻めました。戦後は、島津氏の代表として、徳川家康との交渉に当たりました。慶長15年（1610年）に宮之城で亡くなりました。享年60歳。

死後

家督は、嫡男の忠倍が早世したため、新納氏の婿養子となっていた次男の久元が継ぎました。この忠長の系統が、後に宮之城島津家として繁栄していくことになります。

島津忠長は、武将としての卓越した能力に加え、医療にも通じていた教養人であり、その生涯は、戦国時代から江戸時代への激動期を生き抜いた人物として、今もなお語り継がれています。

もう一度検索