島田正辰

島田正辰（島田左近）：京の権力者、その栄光と悲劇

島田正辰（しまだ まさたつ）は、江戸時代末期に「島田左近」の名で知られた人物です。九条家の青侍として、京の政界で大きな影響力を持っていました。

生涯

出自には諸説あり、石見国の農民出身、または美濃国の神主の子とも言われています。生年も定かではありません。

歴史に登場するのは、井伊直弼が大老に就任した安政年間です。条約勅許問題で、主君である九条尚忠を幕府支持に転じさせ、徳川慶福を次期将軍に擁立しました。

安政の大獄では、井伊直弼の指示のもと、多くの尊皇攘夷派志士を弾圧しました。目明しの文吉（猿の文吉）を使い、徹底的な取り締まりを行いました。この功績により、幕府から多額の賄賂を受け取ったと言われています。

桜田門外の変後も権勢を維持し、和宮降嫁問題にも深く関与しました。武市瑞山が台頭するまで、京の実質的な支配者として君臨しました。「今太閤」と称されるほどの権力者でしたが、その強引な手法は多くの敵を生みました。また、高利貸しで財を成し、文吉に厳しい取り立てを行わせていたとされています。

暗殺

多くの志士から命を狙われるようになった左近は、居場所を転々としました。

文久2年（1862年）7月20日、京都木屋町の愛妾宅に潜伏しているところを、薩摩藩の田中新兵衛らに襲撃されました。逃走中に善導寺の塀を乗り越えようとしたところを斬殺され、首は鴨川に晒されました。

この暗殺事件は、都で頻発する「天誅」の始まりとなり、島田に追従していた者たちも次々と標的となりました。島田の死後、土佐勤皇党の武市瑞山が台頭し、時代は大きく転換しました。墓は大谷本廟にあり、「嶋田龍章」として葬られています。

島田左近は、時代の転換点となった人物として、歴史に名を刻んでいます。

関連項目

* 九条尚忠

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