島田陽子 (詩人)

島田陽子（1929年 - 2011年）は、戦後日本において、詩作と作詞の両分野で多大な功績を残した女性である。

東京に生を受けた島田だが、11歳からは大阪へと移り、その後、生涯にわたり関西を主な活動拠点とした。豊中高等女学校（現大阪府立桜塚高等学校）を卒業後、当初は文芸誌などで小説を発表していたが、1960年代頃から童謡や児童詩の世界に深く関わるようになる。

詩人としての島田陽子の大きな特徴は、その親しみやすい言葉遣い、とりわけ大阪弁を巧みに作品に取り入れた点にある。日常の風景や子供たちの純粋な視点を、温かみとユーモアをもって描き出した彼女の詩は、多くの読者や聞き手に共感と喜びを与えた。こうした詩作活動は、1981年の日本童謡賞受賞という形で高く評価されている。代表的な詩集としては、『大阪ことばあそびうた』や『うち知ってんねん』などがあり、彼女ならではの言葉の世界が広がっている。

詩作に加えて、島田は傑出した作詞家としても知られる。合唱曲から歌謡曲に至るまで、その活動範囲は広大だった。特に有名なのは、1970年に開催された大阪万博の公式テーマソング「世界の国からこんにちは」の作詞である。この曲は、イベントと共に国民的な広がりを見せ、島田陽子の名を広く知らしめることとなった。また、グループサウンズのヒット曲、ザ・ワイルドワンズの「花のヤングタウン」の詞も彼女の筆によるものである。さらに、地域に根ざした活動も重視し、大阪市営地下鉄のテーマソング「地底のランナー」や、多くの自治体（大阪府下の河合町、四條畷市、和泉市、泉南市、兵庫県の荒尾市、鳥取県の淀江町、岐阜県の七宗町、福井県の福井市、鳥取県の日吉津村など）の歌、校歌、団体歌など、様々な組織や地域のために詞を提供した。中には、既存の歌の詞を補作する形で関わったものもある。

彼女の文化に対する貢献は広く認められており、1993年には大阪市民表彰（文化功労）を受賞した。また、帝塚山学院大学で長年にわたり講師を務めるなど、教育・文化の振興にも力を注いだ。日本文藝家協会、日本現代詩人会、日本童謡協会など、多数の文学・音楽関連団体に所属し、その発展に寄与した。

エッセイストとしても活動し、『方言詩の世界』や『金子みすゞへの旅』といった著作を通じて、自身の文学観や他の詩人への考察を発表している。

2011年4月18日、膵臓がんのため、81歳で生涯を閉じた。長年暮らした大阪府豊中市の病院でのことだった。島田陽子が残した、温かく、時にユーモラスで、そして多くの人々の心に響く詩や歌は、今もなお親しまれ続けている。

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