崔善姫

崔善姫（チェ・ソニ）: 北朝鮮の外交を担う要人

崔善姫（チェ・ソニ、최선희）は、1964年8月10日生まれの北朝鮮の外交官であり、政治家です。朝鮮労働党中央委員会政治局委員、最高人民会議外交委員会委員、そして外務相という要職を歴任しており、北朝鮮の外交政策において重要な役割を担っています。

経歴

崔善姫は、政務院総理を務めた崔永林の長女として生まれました（養女という説もあります）。海外での留学経験も豊富で、オーストリア、マルタ、中国などで学び、国際的な視野を広げました。1980年代半ばに北朝鮮外務省に入省し、外交官としてのキャリアをスタートさせました。

2009年8月には、アメリカのビル・クリントン元大統領が平壌を訪問した際に通訳を務め、国際舞台でその名を知られるようになりました。その後、2010年10月には外務省米州局副局長に就任し、着実にキャリアを重ねていきます。

2016年には、6カ国協議に関連して北朝鮮次席代表として中国を訪問。同年には外務省北米局長に昇格するなど、北米との関係において重要な役割を担うようになりました。

2017年1月、ドナルド・トランプが大統領に就任したことを受け、アメリカの元政府当局者らとの意見交換のためニューヨーク訪問を計画しましたが、金正男氏の暗殺事件によりアメリカがビザの発給を却下したため、実現には至りませんでした。しかし、同年5月にはノルウェーのオスロでアメリカの元政府高官らと非公式に接触するなど、積極的に外交活動を行いました。

同年9月には、北朝鮮核問題を巡り、国際連合総会でアメリカと北朝鮮が激しい非難合戦を繰り広げる中、ロシアの招請を受けてモスクワを訪問。10月には、モスクワで開催された核不拡散に関する国際会議に出席し、アメリカのウェンディ・ルース・シャーマン前国務次官（政治担当）や日本の金杉憲治外務省アジア大洋州局長らと交流しました。この際、日朝局長協議は行われなかったものの、金杉局長と複数回接触し、メッセージを伝えたとされています。

2017年11月のトランプ大統領訪中後は、中国の仲介によりアメリカとの米朝協議にも参加したとされています。

2018年3月には、外務次官に昇格。アメリカ担当の韓成烈次官の降格や、金桂官第1次官の体調不良に対応するための人事と見られています。

2018年5月には、中国の大連で習近平国家主席と会談した金正恩委員長の訪中に同行し、米朝首脳会談に向けた準備調整を行ったとされています。また、同月にはアメリカのマイク・ペンス副大統領が北朝鮮の行方について「リビアの二の舞」と発言したことに対し、「許容できない」と反論し、米朝会談の中止につながる一因となりました。

2019年2月にベトナムで行われた米朝首脳会談にも同行し、両首脳の合意なき会談後、アメリカ側の代表団が引き揚げる直前まで調整役を務めました。また、李容浩外相とともに記者会見に臨み、北朝鮮側の提案と要求について、アメリカ側の発表内容に対する反論を交えながら説明を行いました。

金正恩に近い存在として、米朝交渉のキーマンと報道されることも多いです。

2019年4月には、党中央委員会委員に選出され、翌日には国務委員会委員、最高人民会議外交委員会委員、第一外務次官に昇格しました。しかし、2021年9月には国務委員会委員から召還されました。

2022年6月には、朝鮮労働党中央委員会拡大総会で外務相に就任し、北朝鮮の外交を率いる立場となりました。

2023年9月には、新型SLBM搭載潜水艦「金君玉英雄艦」の進水式で、支綱切断とシャンパンの瓶を叩き割る役目を担当しましたが、北朝鮮では一般人がこのような行為を「迷信」として厳しく取り締まっているため、物議を醸しました。

2024年12月には、朝鮮労働党中央委員会総会で、崔善姫外相と李永吉軍総参謀長が党中央委員会政治局委員に選出されることが発表されました。

崔善姫は、その経歴からもわかるように、北朝鮮の外交政策において非常に重要な役割を担っています。彼女の今後の動向は、北朝鮮と国際社会の関係を考える上で、引き続き注目されるでしょう。

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