巖谷一六

巖谷一六について

巖谷一六（いわや いちろく）は、1834年に近江国で誕生し、明治時代に活躍した日本の著名な書家、官僚、および漢詩人です。その本名は修（しゅう）で、若い頃の名前は辨治（べんじ）でした。特に書の技術で知られ、彼の号である一六（一六居士）は広く知られています。彼には他にも迂堂や古梅、金粟道人などの別号があります。彼の三男である巖谷小波は、日本近代児童文学の先駆者として認識されています。

初期の人生

一六は天保5年（1834年）2月8日に滋賀県の甲賀郡水口で生まれました。巖谷家は代々、水口藩の侍医を務めており、正式には「巖谷」と書かれますが、元々は「岩谷」という名前でした。父親の玄通は一六が6歳の時に亡くなり、母親の利子と共に京都に移り住むことになります。京都では医術や漢学、書道の技術を身につける教育を受け、その後書きの技術を駆使して学費を稼いでいました。彼は安政元年（1854年）に水口に帰り、立的（りゅうてき）の名の下、藩医としての職務を果たしました。

政治と官僚としてのキャリア

一六は慶応4年（1868年）4月に新政府に仕官し、公文書の起草や浄書を担当する書記官僚としての道を歩みます。彼は様々な官職を経て、特に三条実美からの信任も受けながら、さまざまな重要な役職に就きます。最終的には元老院の議員として活動し、さまざまな貴族院の役割を果たしました。彼の政治的なキャリアは、近代日本の政府の形成においても重要な位置を占めています。

書家としての名声

書家としての一六は、日下部鳴鶴や中林梧竹と肩を並べる存在であり、明治の三筆の一人と呼ばれています。初めは中沢雪城に師事し、菱湖流を学びましたが、明治政府の出仕後は、旧習を脱して顔真卿の書風を取り入れた力強いスタイルに進化させました。また、1880年に来日した楊守敬から六朝書法を学ぶことで、自らの書風を確立しました。特に行草書には流れるような美しさがあり、彼の作品は日本各地に広まっています。

家族と後の人生

一六は7人の子どもを持ちました。長男の立太郎は鉱山学者として活躍し、次男の弁二郎は日下部鳴鶴の養子となりました。三男の季雄は筆名を小波とし、児童文学者として活動しました。1905年に腎炎で亡くなる際まで、彼は教育や文化の発展に寄与し続けました。

魂の遺産

彼の墓は京都市の正法寺にあり、顕彰碑は滋賀県甲賀市に建てられています。彼の記録や遺稿は、今も数多くの研究や展示で取り上げられ、書道の歴史における重要な位置を占めています。巖谷一六の業績は日本の文化表現の一部として、次世代に受け継がれています。

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