巖谷國士

巖谷國士：シュルレアリスムからメルヘンまで、多様な文化世界を横断する碩学

巖谷國士氏は、フランス文学、評論、随筆、写真、小説と、実に多様な分野で卓越した才能を発揮されている人物です。明治学院大学名誉教授の肩書からもわかる通り、その学識と経験は並々ならぬものがあります。

専門分野：シュルレアリスムとユートピア思想

巖谷氏の研究の中心は、20世紀のシュルレアリスムです。アンドレ・ブルトンやマックス・エルンスト、マン・レイといった巨匠たちの文学、美術、写真、映画作品を深く研究し、その国際的な展開や歴史的意義について数多くの著作を発表しています。 単なる美術史や文学史の枠を超え、シュルレアリスムが社会や文化に及ぼした影響を多角的に考察する氏の研究姿勢は、高く評価されています。

また、18～19世紀のユートピア思想にも造詣が深く、シャルル・フーリエの思想を中心に、当時のオカルト思想なども研究対象としています。さらに、シャルル・ペローなどの作品を通して17～18世紀の昔話やメルヘンにも精通しており、これらの分野に関する著書や翻訳も多く手がけています。

多様な活動：批評、エッセイ、紀行、創作

巖谷氏の活動は研究分野にとどまりません。文学、美術、映画、写真、漫画、メルヘンといった分野はもちろんのこと、旅、都市、庭園、温泉、食物といった日常の様々な事柄についても、批評家、エッセイスト、講演家として幅広く活動し、数多くの著作を発表しています。

紀行作家、旅行写真家としても知られ、日本全国と世界60カ国以上を旅し、自身の撮影した写真と共に、ヨーロッパ、地中海、オリエント、アジア、そして日本各地の魅力を伝える著作や講演を行っています。特に庭園紀行は、氏の著作における重要な一分野であり、自身の撮影した写真を使った個展も開催されています。

近年では創作メルヘンにも挑戦しており、専門書やエッセイ集に加え、展覧会の監修、カタログの編集執筆、芸術や文化、地域に関する講演なども精力的に行っています。

華麗なる家系と豊かな人間関係

巖谷氏は、国文学者である巖谷榮二氏を父に持ち、祖父はメルヘン作家・児童文学者の巖谷小波氏、曾祖父は書家・医師・貴族院議員の巖谷一六氏という、まさに文化人一家に生まれ育ちました。幼少期から文学、美術、漫画、映画、建築、園芸など多様な文化に触れ、東京の町々を散策する中で培われた感性は、氏の作品に深く反映されています。

東京大学在学中には、多くの文化人、芸術家と交流し、瀧口修造氏、澁澤龍彦氏らとの出会いが、氏のシュルレアリスム研究に大きな影響を与えました。明治学院大学で教鞭をとった後も、多くのアーティストとの交流を続け、その繋がりは氏の著作や展覧会監修などに反映されています。

多様な著作：研究、翻訳、創作、紀行

巖谷氏の著作は、シュルレアリスムに関する専門的研究書から、エッセイ集、紀行文、創作メルヘンまで多岐に渡ります。ブルトンやエルンストといったシュルレアリスムの巨匠たちの作品を数多く翻訳する一方、自らもシュルレアリスムに関する独自の考察を発表し続けています。また、澁澤龍彦氏との共著や、瀧口修造氏に関する評伝など、多くの文化人との交流を通して生まれた作品も数多くあります。

写真集や庭園に関する書籍も多く出版しており、写真家としての才能も存分に発揮されています。

まとめ

巖谷國士氏の活動は、その専門分野であるシュルレアリスム研究にとどまらず、多様な文化領域にまたがる広範なものであり、その博識と豊かな感性、そして多くの文化人との交流によって育まれた独自の視点は、これからも多くの読者、鑑賞者を魅了し続けることでしょう。

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