川尻石器時代遺跡

川尻石器時代遺跡：縄文文化の変遷を今に伝える史跡

川尻石器時代遺跡は、神奈川県相模原市緑区谷ヶ原に位置する、縄文時代中期～後期（約5500～3500年前）の集落跡であり、国の史跡に指定されています。

概要

遺跡は、相模川が丹沢山系を抜け、相模台地に広がる河岸段丘の始まりに位置し、標高は約140mです。川尻という名称は、旧地名である川尻村に由来します。遺跡の名称に「石器時代」とありますが、これは発見当初に十分な研究が進んでおらず、石器時代の遺跡と考えられたためです。しかし、その後の調査で遺跡の大部分が縄文時代のものと判明しました。

遺跡からは、縄文時代中期の竪穴建物跡、縄文時代後期の敷石建物跡など、合計80軒以上の建物跡が確認されています。これらの建物跡は、当時の人々の生活様式を知る上で貴重な情報源となっています。

発見と調査の歴史

遺跡の最初の発見時期は不明ですが、大正年間には既に豊富な遺物が見つかっていました。1929年（昭和4年）には、縄文時代後期のものと見られる柄鏡形敷石建物跡が検出され、1931年（昭和6年）7月31日に国の史跡に指定されました。その後も発掘調査は範囲を広げながら続けられ、1989年（平成元年）の調査では、縄文時代中期の竪穴建物46軒、後期の敷石建物跡1軒などが確認されました。また、それまで知られていなかった古墳時代～平安時代の集落跡や旧石器時代の遺構・遺物も出土し、歴史の多層性が明らかになりました。

その後の発掘調査と研究によって遺跡の全容が明らかになったことから、2001年（平成13年）1月29日、2004年（平成16年）9月30日、2006年（平成18年）7月28日に相次いで国の史跡の指定範囲が追加され、遺跡全体の総面積は23,356.62平方メートルに及びます。

出土遺物

敷石建物跡やその周辺からは、多くの遺物が見つかっています。具体的には、落とし穴の遺構、打製石斧、石匙、石鏃、石剣、敲石、砥石、石皿、石棒、甕形土器、土偶、土製円盤などが出土しています。これらの遺物は、当時の人々の生活や技術を知る上で重要な手がかりとなります。

また、縄文末期の建物群跡では、配石遺構や配石墓群が見られるとともに、集落の中央を掘り下げて窪地化した造成の痕跡が見られます。この窪地からは焼骨が大量に出土しており、墓や弔いの文化につながる特異な縄文文化の変遷を物語っています。

所在地と交通

所在地：相模原市緑区谷ヶ原2丁目788-2・789-1ほか
交通：
JR横浜線、京王相模原線橋本駅から約4.0キロメートル
バス：「橋本駅北口」から「三ケ木」行き、または「橋本駅南口」から「若葉台」行きに乗車、「久保沢」下車、徒歩5分程度

川尻石器時代遺跡は、縄文時代の生活や文化、精神性を知ることができる貴重な史跡です。発掘された遺物や建物跡から、当時の人々の暮らしを想像し、縄文文化の奥深さに触れてみてください。

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