川田龍吉

川田龍吉：日本の近代化を牽引した実業家

川田龍吉は、1856年（安政3年）に土佐藩士の家に生まれ、日本の近代化に大きく貢献した実業家です。男爵の爵位を持ち、「男爵いも」の名称の由来となった人物としても知られています。

生い立ちと英国留学

龍吉は、土佐藩士・川田小一郎の長男として生まれました。幼少期から英才教育を受け、慶應義塾医学所に入塾しますが、間もなく中退。その後、1877年（明治10年）から7年間、イギリス・スコットランドに留学し、グラスゴー大学で船舶機械技術を学びました。造船業が盛んな地で実地修行を積むとともに、イギリス式の農業にも触れ、後の活動に大きな影響を与えました。

実業家としての活躍

帰国後、三菱製鉄所、日本郵船を経て、1893年（明治26年）に横浜船渠会社取締役、1897年（明治30年）には社長に就任。その前年に父の死去により男爵を継承しました。1903年（明治36年）に社長を退任しましたが、この間、父が開発した長野県軽井沢の広大な牧場を受け継ぎ、経営を行いました。

また、横浜船渠在勤中の1902年（明治35年）には、アメリカ製の蒸気自動車「スタンレー・スチーマー」を購入し、自ら運転しました。これは日本初のオーナードライバーと言われています。この蒸気自動車は、後に北海道でも使用され、現在は男爵資料館に展示されています。

北海道での農業近代化への貢献

1906年（明治39年）には函館船渠会社専務取締役として北海道に渡り、1908年（明治41年）には欧米から導入したアイリッシュ・コブラーという品種の馬鈴薯を自営農場で栽培し、普及に尽力しました。この品種は後に、川田の爵位にちなんで「男爵いも」と呼ばれるようになり、現在でも広く親しまれています。

1911年（明治44年）に函館船渠を退社後、龍吉は北海道農業の近代化に生涯を捧げることを決意。渡島当別（現・北海道北斗市）に広大な農地を開墾し、最新の農機具を導入して機械化農業を試みました。

晩年と功績

1951年（昭和26年）、老衰のため、渡島当別の自宅で生涯を閉じました。享年95歳。その功績を称え、1978年（昭和58年）には、川田農場の跡地に男爵資料館が開設されました（現在は休業中）。

2019年には、川田の農場があった七飯町に複合施設「THE DANSHAKU LOUNGE」が開場し、蒸気自動車や農機具などが展示されています。

川田龍吉は、実業家としてだけでなく、日本の農業近代化に大きく貢献した人物として、その名を歴史に刻んでいます。

栄典

1908年（明治41年）12月26日 - 従四位
1925年（大正14年）1月14日 - 御紋付銀杯
1945年（昭和20年）1月15日 - 御紋付木杯御絹

参考文献

『サムライに恋した英国娘―男爵いも、川田龍吉への恋文』伊丹政太郎、アンドリュー・コビング共著、藤原書店、2005年

関連情報

道の駅なないろ・ななえ - 川田ゆかりの品を所蔵した施設「THE DANSHAKU LOUNGE」が隣接。
手塚治虫の漫画『シュマリ』 - 主人公に人生の指針を示す人物として登場。

外部リンク

男爵資料館
THE DANSHAKU LOUNGE

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