慶應義塾医学所

慶應義塾医学所

慶應義塾医学所は、1873年（明治6年）に東京府三田に設立された私立の医学教育機関です。創設者である福澤諭吉は、適塾で医学を学び、海外の病院視察を通して西洋医学の重要性を痛感していました。当時、慶應義塾には医学を専門とする機関がなかったため、塾内に医学所を設立する構想が持ち上がり、開所へと至りました。

医学所では、従来の漢方医学だけでなく、西洋医学も積極的に取り入れました。開塾当初から西洋医学を修めた医師を育成し、日本の医学界に新たな風を吹き込もうとしました。特に注目すべきは、当時の日本の医学界がドイツ医学を主流としていた中で、慶應義塾医学所が唯一、イギリス医学を教授した点です。これは当時の日本においては異例のことであり、医学教育に多様性をもたらす上で重要な役割を果たしました。

慶應義塾医学所の設立は、その後の慶應義塾大学大学院医学研究科・医学部へと繋がる重要な礎となりました。また、東京慈恵会医科大学の前身ともなっており、日本の医学教育史において非常に大きな意義を持つ機関であったと言えるでしょう。

さらに、医学所が廃止された後、その校舎は福澤諭吉の高弟である矢野文雄（号・龍渓）によって三田予備校として再利用されました。これは、医学所の歴史が教育の発展に寄与した一例と言えます。

開塾以前の門下生

医学所設立以前にも、慶應義塾には医学を志す多くの門下生がいました。以下に主な人物を挙げます。

足立寛: 前期鉄砲洲時代に入塾。適塾で医学を学び、後に陸軍軍医総監となりました。
松山棟庵: 1866年（慶応2年）1月に入塾。慶應義塾医学所の初代校長を務めました。
安藤正胤: 1867年（慶応3年）1月に入塾。晩年は静浦の保養院経営に携わりました。
印東玄得: 1867年（慶応3年）2月に入塾。大学東校に移り、卒業後には医科大学教授となりました。
近藤良薫: 1868年（明治元年）11月に入塾。横浜の十全病院で院長を務めました。

開塾後の活動

医学所開塾後には、『東京日日新聞』に学科課程や学生募集広告が掲載され、多くの学生が医学を学ぶために集まりました。

主な出身者

医学所からは、様々な分野で活躍する多くの人材が輩出されました。その中でも特に著名な人物として、川田龍吉が挙げられます。

川田龍吉: 1874年（明治7年）2月に入塾。三菱製鉄所、日本郵船を経て、横浜船渠会社社長、函館船渠会社専務を務め、川田農場を経営するなど、実業家としても成功を収めました。

関連事項

慶應義塾医学所は、以下の教育機関・医療機関と深い関わりがあります。

慶應義塾大学
慶應義塾大学大学院医学研究科・医学部
大阪大学医学部附属病院
東京慈恵会医科大学
東京医学校（大学東校）
長崎医学校

外部リンク

* 慶應義塾豆百科 No.23 慶應義塾医学所


慶應義塾医学所は、日本の医学教育における転換期に重要な役割を果たした教育機関です。西洋医学の導入、イギリス医学の導入、そして後の医学教育機関の設立に繋がったという点において、その歴史的意義は非常に大きいと言えるでしょう。

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