川路柳虹

川路 柳虹（かわじ りゅうこう）

川路柳虹は明治21年、1888年7月9日に東京で生まれ、昭和34年、1959年4月17日に亡くなった日本の詩人であり評論家です。本名は誠であり、彼の作品は明治、大正、昭和という時代を背景に、特に口語自由詩の分野で革命的な役割を果たしました。

略歴

柳虹の曾祖父は幕末の旗本であり、父は川路寛堂、母は浅野長祚の五女で、名門の家系に育ちました。彼の若い頃は福山市や淡路島の洲本で過ごし、そこで文学への強い関心を持つようになりました。洲本中学では文学に触れ、自らの詩作を始め、『中学世界』『ハガキ文学』『小国民』といった媒体に作品を投稿し始めました。

1903年に中学校を中退し、美術工芸学校に進学した彼は、1906年から口語自由詩の制作を始め、その後関西美術院に通いながら絵画も学びました。詩作においては、特に詩草社から刊行される詩誌「詩人」で彼の名が広まり、初めての口語詩作品「塵溜」が発表され大きな評価を受けました。

詩作と文学の活動

1908年には東京美術学校に進み、その後『早稲田文学』や『文章世界』などさまざまな文芸誌に作品を掲載しました。1910年に出した処女詩集『路傍の花』では、口語自由詩の新たなスタイルを確立し、古典的な詩型を破ることで新しい表現の地平を切り開きました。この詩集は言文一致の詩として注目を集め、自然主義的な革新をもたらしたのです。

1914年には東京美術学校を卒業し、さらなる詩集『かなたの空』では象徴詩の技法をこの身に宿しました。その後も三木露風とともに詩誌『未来』の同人として活躍し、創刊した曙光詩社では多くの新進詩人を育成しました。

詩集『勝利』や『曙の声』などを発表する中で、彼は評論活動も行い、フランスの詩壇に影響を受けた作品を紹介しました。1921年には詩誌「炬火」を創刊し、以降出した詩集でも知的な視点を取り入れ、詩の深さを増していきました。

晩年と影響

1927年にはパリ大学で東洋美術史を学び、美術評論家としても著名になりました。彼の著作には『現代美術の鑑賞』や『マチス以後』などがあります。川路柳虹はまた、象徴主義の詩人ポール・ヴェルレーヌの詩集を選訳するなど、広範な文化的活動を展開しました。

1952年には法政大学で講師として教え、多くの後進に影響を与えました。1958年には日本芸術院賞を受賞し、彼の文学的貢献が評価されましたが、翌年に脳出血により70歳で亡くなりました。彼の作品は心に響く詩ばかりであり、没後も多くの読者に感動を与え続けています。彼の遺稿詩集『石』は、その真摯な詩の世界を後世に伝える重要な資料となっています。

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