東洋美術史

東洋 美術史

東洋美術史は、アジア地域における美術の歴史を包括的に扱う分野です。この広大な地域には、中国、朝鮮半島（漢字文化圏であり、日本を含むこともある）、インド、東南アジア、イランなどの西アジアが含まれます。東洋美術は、その多様な文化と宗教の影響を受けて発展してきました。特に重要なのは、アジアの多様な文化を内包しながら美術史が形成されてきた点です。東洋美術史は西洋美術史と並行して、時には数世紀も先行して発展してきました。イスラム[[美術]]、インド美術、中国美術、そして日本[[美術]]は、西洋に大きな影響を与えてきました。もちろん、その逆もまた真実です。

仏教 美術

仏教美術は、インド亜大陸において紀元前5～6世紀の釈迦の生涯から発展しました。仏教の信者が各地に広がるにつれて、仏教美術も広がりました。そのルートは、中央アジアから東アジアへ向かう北ルートと、南アジアへ向かう南ルートがあります。インドでは、10世紀頃に仏教がヒンドゥー教やイスラム教の影響で衰退するまで、仏教美術は隆盛を極め、ヒンドゥー美術の発展にも寄与しました。

曼荼羅

曼荼羅は、修行者が精神的な訓練のために使用する道具であり、神聖な空間を作り出し、トランス状態に入るために用いられます。その美術的な価値も非常に高いです。

仏像

仏教美術の中心ともいえる仏像は、初期の仏教では偶像化が禁止されていましたが、後世になりギリシア文明（ヘレニズム）の影響を受けて生まれたと言われています。これがガンダーラ美術です。その開始時期はパルティア治世の紀元前50年～75年とされ、クシャーナ朝治世の1世紀～5世紀に最盛期を迎えました。

東南アジアの美術

インドネシアの美術

インドネシアの芸術と文化は、先住民の慣習と外国の影響が長い間相互作用することで形作られてきました。インドネシアは、極東と中東を結ぶ古くからの交易路の中心に位置し、ヒンドゥー教、仏教、儒教、イスラム教など多くの宗教の影響を強く受けてきました。その結果、元々の先住民文化とは大きく異なる、複雑に混ざり合った文化が形成されました。特に、8世紀から10世紀にかけて、芸術形式は単独の美術作品としても、寺院に取り入れられたものとしても栄えました。

代表的なものとして、ジャワ島中部にあるボロブドゥール寺院のレリーフ彫刻があります。3キロメートルを超える精緻な浮き彫りは、釈迦の生涯とその教えを物語っています。寺院には、かつて504体の仏像が安置されていました。この遺跡は、ジャワ中部の他の遺跡と同様に、インドからの明らかな影響を示しています。

インドネシアの絵画は一般的には知られていませんが、バリの絵画は緻密で表現豊かであり、自然の光景や伝統舞踊を題材にしています。また、クニャの壁画には、オーストロネシア文化に共通する植物や動物のモチーフが用いられています。カリグラフィーはクルアーンに基づいた装飾として用いられています。現代のインドネシアの画家は、幅広い様式と画題を扱っています。

カンボジアの美術

カンボジアの芸術と文化は、数世紀に遡る豊かで多様な歴史を持ち、インドの影響を強く受けてきました。カンボジアはタイやラオスとも相互に影響を与え合いました。カンボジアの歴史を通して、宗教が主要なインスピレーションの源でした。約2000年にわたり、カンボジアは先住民のアニミズム的信仰とインドの宗教である仏教、ヒンドゥー教が融合した独自の信仰を育んできました。

インドの文化は1世紀頃には東南アジア本土に広まり、海上の商人がインドの習慣と文化をタイランド湾沿いと太平洋沿岸の港に持ち込んだと考えられています。最初にこれを受け入れたのが扶南国でした。カンボジア文化は、ジャワ、中国、ラオス、タイの各文化からも要素を取り入れてきました。

カンボジア美術の歴史は古代の工芸にまで遡り、クメール美術はアンコール期に頂点に達しました。伝統的なカンボジアの美術と工芸には、布地、織物、銀細工、石彫、漆器、陶器、寺院の壁画、凧作りなどがあります。1940年代には現代美術の伝統が始まりましたが、20世紀後半には伝統芸術も現代美術も衰退しました。しかし近年、政府、NGO、観光客の支援が増加し、芸術の復興が進んでいます。

クメール彫刻は、9世紀から13世紀にかけてクメール王朝が統治した領域で発展した石彫刻です。最も著名な例は、その中心地であったアンコール遺跡で見られます。7世紀には、クメール彫刻はヒンドゥー教の影響から離れ始め、独自の様式を確立しました。クメール彫刻に登場する神々は、仏教とヒンドゥー教のものです。

タイの美術

タイの芸術と美術は、伝統的に仏教と王室の美術でした。彫刻はほぼ仏像のみで、絵画は本の挿絵や建物（主に宮殿や寺院）の装飾に限られていました。各時代のタイの仏像には、独自の様式が見られます。現代のタイ美術は、伝統的な要素と現代的な技法を組み合わせています。

伝統的なタイの絵画は、遠近法を用いない二次元的な表現でした。遠近法は、西洋の影響を受けて19世紀半ばに導入されました。絵画の題材としてよく用いられたのは、ジャータカ物語、仏陀の生涯、仏教の極楽と地獄、日常生活の場面です。

スコータイ時代（14世紀）の仏像は優雅で、しなやかな体と面長で卵形の顔が特徴です。この様式は、解剖学的な詳細を省略することで、仏の精神的な側面を強調しました。この効果は、彫像よりも鋳像において高められました。また、この時代には「遊行仏」の姿も見られます。スコータイからは、宋胡禄様式の陶器も大量に生産され、東南アジア各地で取引されました。

ベトナムの美術

ベトナムの芸術は、東南アジア地域で最も古い文化の一つです。豊かな芸術的遺産は先史時代に始まり、絹絵、彫刻、陶磁器、木版画、建築、音楽、舞踊、演劇などがあります。

伝統的なベトナムの美術は、ベトナムで、またはベトナム人芸術家によって制作されたものであり、（精巧なドンソン銅鼓などの）古代のものから、北属期後の美術までが含まれます。北属期後の美術は、道教や儒教よりも仏教美術の影響を強く受けています。チャンパの美術やフランスの美術も、後に影響を与えました。陶磁器、書道、伝統建築には、中国の影響が見られます。現代では、ベトナムの漆絵が非常に人気を集めています。

最後の統治王朝である阮朝（1802年頃～1945年）では、陶磁美術に新たな関心が寄せられました。アジア各地の宮廷がベトナムの陶磁器を輸入しました。

19世紀初頭には、近代美術とフランス美術の影響がベトナムに広がりました。20世紀初頭には、インドシナ高等美術学校（現ヴェトナム美術大学）が設立され、ヨーロッパの技法が教えられるようになり、ハノイやホーチミン市などの大都市で影響が広がりました。

フランスがベトナムを統治していた80年間は、ベトナム人の海外渡航が制限され、独立戦争が長期に及んだため、海外で活躍できたベトナム人芸術家はごく少数でした。裕福な家庭に生まれた少数の芸術家は、フランスで活動する機会を得ました。

現代のベトナムの美術家は、伝統的な絹や漆などを素材に使いながら、フランスの技法を取り入れています。そして、東洋と西洋の要素を独自に融合させた作品を制作しています。ベトナムの書道には古い歴史があり、かつては漢字がチュノムとともに使われていましたが、現代ではローマ字を基にしたクオック・グーが使われるようになりました。

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