6筋位取り

6筋位取り：対振り飛車戦法の攻防

6筋位取りは、将棋における居飛車側の戦法の一つです。自陣の右翼、6筋（後手なら4筋）の地点を確保し、そこから陣形を構築していく点が特徴です。特に振り飛車に対して用いられることが多く、玉頭位取りや5筋位取りと共に、対振り飛車戦法の代表的な戦型として挙げられます。

この戦法の考案者としては、昭和を代表する作家でアマチュア将棋界でも強豪として知られた山口瞳氏と、山口氏を指導した棋士の山口英夫氏が挙げられます。そのため、「瞳流6筋位取り」と呼ばれることもあります。元々は飛車落ちの定跡として用いられていた戦法ですが、近年でもプロ棋士によって指されており、その戦術的な奥深さが改めて注目されています。

6筋位取りの目的と戦略

6筋位取りの最大の目的は、自陣の堅牢な陣形を構築することです。持久戦を志向する居飛車にとって、6筋の確保は、相手の攻撃をいなすための重要な拠点となります。特に振り飛車に対しては、6筋の位を許すと、振り飛車側が目指す高美濃囲いなどの陣形構築が阻害されるため、重要な戦略的意味を持ちます。

振り飛車側は、6筋の位取りを許さないために、▲6六歩（△4四歩）に対して△6四歩（▲4六歩）と突いてくることがよくあります。しかし、この反応を逆手に取り、中原流のような鋭い攻め筋を与えるケースもあります。一方、振り飛車側にとっても、6筋の位取りは必ずしも不利ではありません。美濃囲いの構築に直接的な支障はないため、居飛車が陣形を固めている間に、攻撃体制を整える時間を得ることができます。

6筋位取りの陣形と発展

6筋位取り後の陣形としては、金美濃型が一般的です。しかし、相手が振り飛車穴熊を採用してきた場合は、左美濃から銀冠へと発展させることもあります。また、カメレオン戦法のように、早期に6六歩、6七銀と進めて6筋の位を確保する指し方も存在します。

6筋位取りの実戦例と評価

6筋位取りは、過去においても多くのプロ棋戦で用いられてきました。例えば、1966年の最強者決定戦記念対局（内藤国雄九段対大山康晴十五世名人戦）や、1982年の第7期棋王戦五番勝負（米長邦雄棋王対森安秀光挑戦者戦）などが有名です。近年では、2011年の竜王戦決勝トーナメント（橋本崇載八段対久保利明九段戦）や、2012年の王将戦挑戦者リーグ（深浦康市九段対羽生善治九段戦）でも見られました。

久保利明九段は、6筋位取りに対して△6四歩という新手を開発しました。これは、6筋の位を取らせる作戦が不利であるという認識に基づいた指し方です。菅井竜也七段の『菅井ノート 後手編』でも、△6四歩が推奨されています。

その他の6筋位取りの応用

6筋位取りは、様々な振り飛車に対して適用可能です。例えば、筋違い角型の四間飛車に対しては、腰掛銀を用いた6筋の位取りが有効です。また、立石流四間飛車に対しては、右金を動かさずに6筋と7筋の位を取る対策が知られています。

左玉の中でも、高田尚平氏が用いる高田流は、6筋の位を取る振り飛車破りの戦法として知られています。

まとめ

6筋位取りは、一見すると保守的な戦法に見えるかもしれませんが、その奥深さ、そして現代将棋においても有効であることは、多くのプロ棋士の実戦によって証明されています。持久戦を志向しつつ、相手の戦術を冷静に見極め、柔軟に対応していくことが、この戦法を成功させる鍵と言えるでしょう。

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