巫山

巫山の神秘

巫山（ふざん）は中国・重慶市巫山県と湖北省の境界に位置する美しい山で、長江がその中を走っているために、巫峡を形成しています。この山は重なり合う峰々が天日を隠し、大地に幻想的な雰囲気をもたらします。特に有名な十二峰の中で、神女峰がその象徴とされています。この壮大な山脈は、四川盆地を東側に貫通する褶曲山脈の一部であり、北東から南東へと大巴山脈と続いています。巫山の全長は約40kmで、主峰である烏雲頂は標高2400mを誇る、まさに自然の偉大さを象徴する場所です。

巫山神女の伝承

巫山には神話的な背景があり、特に有名なのが「巫山神女」の伝説です。この物語は、楚の詩人・宋玉の『高唐賦』に記されています。そこでは楚の懐王が高唐という地で遊んでいると、夢の中に「巫山の女」と名乗る美しい女性が現れ、彼に特別な想いを告げるシーンが描かれています。彼女は「私は巫山の南に住んでおり、朝には雲となり、夕には雨となります。毎朝夕、私はこの楼台に参ります」と告げ、別れを告げました。

この伝説から、「巫山の雲雨」という言葉が生まれ、男女が夢の中で契りを結ぶことを象徴するようになります。この物語の中で描かれる雲夢沢の位置は現在とは異なるとの説もあり、現在の湖北省漢川市南方の地点が舞台ではないかと指摘されていますが、神話の魅力は今も色あせません。

神女の素性

巫山の女神の存在は、伝説の中で彼女自身が「巫山の女」と名乗るのみで、その素性についてはさまざまな解釈が存在します。江淹の作品や李善の注釈によれば、彼女は楚の帝の末娘で名を瑤姫としているとされ、未婚のまま巫山に祀られたとされています。一方、赤帝の娘とも伝えられ、彼女の存在は多様な形で伝わっています。

さらに、後代の文献では、瑤姫は西王母の娘であり、禹の妻とされるなど、神話は地域や時代によって異なる解釈がされてきました。中華民国の学者である聞一多は、これらの神話を詳細に分析し、高唐神女の物語が、実は楚の始祖女神に由来し、他の神話と結びついている可能性があると考えています。

文化への影響

巫山の神女の伝説は、古代中国文学や芸術においても大きな影響を与えております。それは愛や別れを象徴する物語として、時代を超えて語り継がれ、多くの作品に引用されています。巫山を訪れる人々は、この神話とともに自然の美しさを感じながら、古の物語を思い浮かべることでしょう。

このように巫山は、ただの美しい山ではなく、深い歴史と神話が息づく場所であり、訪れる者に多くの感動をもたらします。

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