瑤姫

瑤姫（ようき）: 中国神話の女神

瑤姫は、中国神話において特異な役割を果たす女神であり、その美しさや神秘性から多くの伝説や物語が語り継がれています。瑤姫は、炎帝の娘であり、別名を巫山神女（ふざんしんじょ）として知られています。彼女に関連する草「瑤草」は、瑤姫そのものの象徴ともされています。

伝説の概要

瑤姫は、古代中国の楚に存在した名作、宋玉の『高唐賦』や『神女賦』に描かれる巫山の女（むすめ）としてその名を知られています。特に、楚の懐王の夢に現れ、契りを結んだという物語が印象的です。『文選』の中に引用されている『襄陽耆旧伝』によれば、瑤姫は赤帝にあたる炎帝の娘であり、結婚を果たさぬまま亡くなり、巫山の地に葬られたとされています。

また、五代十国時代の杜光庭が著した『墉城集仙録』では、瑤姫を西王母の娘のひとりであり、禹の治水事業に取り組んだ結果、その后となったとする伝承も存在します。これらの物語は瑤姫の神秘的な存在をより深め、彼女にまつわる信仰を広めていきました。

瑤姫の神話と比較神話学の視点

中華民国の著名な学者、聞一多は、巫山神女の起源について注目し、彼女は楚の始祖女神であると考えています。さらに、巫山神女、女媧、夏の塗山氏、殷の簡狄は同じ伝承から派生したものである可能性があるとも推測しています。

このような観点から、比較神話学者の森雅子は瑤姫を元々は豊穣の象徴として唱えられた女神であり、天界から降りて人間の王と交わり、その後姿を消す「聖婚の花嫁」の役割を担っていたのではと想像しています。これにより、瑤姫は神話の中で重要な位置を占める存在へと成長していったのです。

瑤草の伝承

瑤草（ようそう）は、瑤姫に関連した草であり、江淹の「別賦」においても言及されています。この草は一般的に『山海経』に登場する「䔄草」と同一視されています。そのため、古代の文献が瑤草の象徴しているものや、瑤姫自身の姿を通じてどのように評価されていたかが探求されています。

1936年には、民俗学者の孫作雲が『山海経』の「姑媱山の帝女」と『高唐賦』の「巫山神女は同一である」と主張しました。その後、1979年には神話学者の袁珂が『高唐賦』は「䔄草」と関わりを持ち、発展したものであると示唆し、この考え方が広まりました。

森雅子の考察によれば、瑤草にまつわる伝承は、実際には結婚することなく亡くなった娘の悲しみや恨みが色濃く残ったものであり、これが媚薬や恋愛に関する薬の由来に結びついていったと推測されています。

結論

瑤姫は、中国の神話における非常に魅力的で多様な側面を持った女神であり、その魅力は伝説や物語を通じて今もなお語り継がれています。彼女を中心とした神話は、さまざまな文化や価値観を反映し、今後も研究の対象として興味深い存在であると言えるでしょう。

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