市井舞

市井 舞（いちい まい）

1980年3月21日生まれ、埼玉県上尾市出身。日本のリングで女子プロレスラーとして、また総合格闘家としても異色のキャリアを築いた人物です。その現役生活は、波乱に富み、多岐にわたる団体や競技の垣根を越えたものでした。

プロレス界での黎明期とユニット活動

市井舞は、2004年4月10日にNEO女子プロレスの北沢タウンホール大会でプロレスラーとしての第一歩を踏み出しました。デビュー戦の相手は、後に縁の深い関係となるさくらえみでした。初期のキャリアを過ごした我闘姑娘では、2005年に春日萌花とともに「舞組」を結成。後に早乙女未来も加わり、3人体制でプロレス界の「世界征服」を掲げた独特なユニットとして注目を集めました。しかし、2006年4月に発生したサイン会での出来事がきっかけとなり、舞組は活動停止、事実上の解散へと追い込まれます。同時期には、我闘姑娘を離れ、伊藤薫プロレス教室（伊藤道場）への移籍を決断。我闘姑娘代表であったさくらえみとの関係性は、この移籍の背景にも影響を与えたとされており、本人は後に「追い出されるように出たが、伊藤さんに拾ってもらった」と当時の状況を語っています。伊藤道場移籍後も、女子プロレス団体・格闘美のリーグ戦「LEAGUE PRINCESS」に参戦するなど、精力的に活動を続けました。しかし、伊藤道場を「世界一にする」と公言しながらも、2008年9月には伊藤道場を退団することになります。

総合格闘技への挑戦と戴冠

プロレス活動と並行して、市井舞は総合格闘技にも強い関心を示していました。2006年11月29日、スマックガール後楽園ホール大会で総合格闘技デビューを果たしますが、約2年半ぶりの試合となった藤野恵美に判定負けを喫します。それでも挑戦を続け、2008年1月19日には新宿FACEで開催された初代UKF女子総合格闘技インターコンチネンタル王座決定戦に出場。日本の関友紀子を破り、見事に初代王座を獲得しました。さらに同年5月19日のDEEP 35 IMPACTでは、DEEP女子フライ級王者として絶対的な強さを誇っていたしなしさとこと対戦。試合決定が直前であり、体調不良も抱える中の厳しい状況でしたが、多くの予想を覆す判定勝利を収め、格闘技界に大きなインパクトを与えました。

再びプロレスのリングへ、そして引退

2009年8月21日、かつて所属した我闘姑娘代表であったさくらえみが率いるアイスリボンに、預かりという形で加入。8月23日の後楽園大会で、伊藤道場退団以来中断していたプロレス活動を再開しました。アイスリボンではプロレスと並行して総合格闘技の試合にも継続して出場し、JEWELSなどのリングで国内外の強豪選手たちと拳を交わしました。2010年9月23日には、GENTAROと組んで都宮ちい・木高イサミ組からインターナショナル・リボンタッグ王座を奪取。しかし、そのわずか2日後には、さくらえみ・高橋奈苗組との初防衛戦に敗れ、王座から陥落しました。この時期、所属を巡る状況は再び変化し、2010年12月29日のアイスリボン道場大会を最後にアイスリボンを退団し、フリーランスとして活動することを選択しました。

現役引退とその後の歩み

フリーとなった市井舞は、2011年4月15日に行われたBeginning新宿FACE大会での華名戦を最後に、プロ格闘家としてのキャリアにピリオドを打ちました。この引退と同時に結婚を発表し、人生の新たなステージへと進みました。引退後も様々な活動を展開しており、2011年7月にはチャリティ公演の舞台に出演するなど、表現者としての活動も見せています。さらに、2013年にはプロレスとアイドルの要素を融合させた「無敵アイドル!ムテキど～る☆」をプロデュース。2014年には古巣であるアイスリボンの大会などで、自身がプロデュースするユニットのエキシビションを実施するなど、プロレス界との関わりも継続しています。また、同年には離婚も経験するなど、公私の両面で多くの出来事を経ています。

得意技としては、コーナーから相手に背を向けつつ繰り出す延髄斬り系の「彗星キック」や「二段蹴り」、変幻自在な「三角跳びプランチャ」などが知られています。入場テーマ曲にはTHE MAD CAPSULE MARKETS|THE_MAD_CAPSULE_MARKETSの「FLY HIGH」を使用していました。獲得タイトルには、初代UKF女子総合格闘技インターコンチネンタル王座、第12代インターナショナルリボンタッグ王座に加え、アイアンマンヘビーメタル級王座も名を連ねています。そのキャリアは、プロレスラーとして、総合格闘家として、そしてプロデューサーとして、常に新しい挑戦を続ける市井舞の探求心を示すものと言えるでしょう。

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