市川昌倚(いちかわ まさより)
市川昌倚は、
生没年不詳の
安土桃山時代から
江戸時代にかけての武将です。通称は助一郎、宮内助。父は駒井肥前守(勝英)です。その名は、資料によって「昌倚」と「昌家」の二つの表記が見られますが、最終的には「昌倚」が正しいとされています。
生涯
武田家臣時代
天正3年(1575年)の
長篠の戦いで、
市川家光(以清斎元松)の子である市川昌房・
市川内膳正兄弟が戦死。
市川内膳正の子・市川満友が幼少だったため、昌倚は
市川家光の養子となりました。
天正4年(
1576年)には
武田勝頼から軍役を命じられ、この時「助一郎」を名乗っています。
武田氏滅亡後、徳川家康の家臣へ
天正10年(
1582年)に
武田氏が滅亡すると、昌倚は徳川家康に臣従しました。同年提出された
天正壬午起請文には、信玄近習衆として「市川宮内介」の名が見られます。家康に仕えた昌倚は、同年10月8日に甲斐国後屋敷郷と境郷の所領を安堵されました。この際、「宮内助」を名乗っていましたが、翌年には「助一郎」に戻っており、混乱が見られます。
徳川家康配下としての活動
『寛政譜』によると、
天正14年(
1586年)に
市川家光の子・市川満友が元服すると、昌倚は家督を譲り、自身は別家を立てたとされています。養父の
市川家光は、
武田氏滅亡後に
徳川四奉行となり、
文禄2年(
1593年)に亡くなっています。
文禄5年(
1596年)には、高野山成慶院で父の駒井肥前守、母の「玉峯妙清禅定尼」、養父の
市川家光とその妻「香庵理桂禅定尼」の追善供養と自身の逆修供養を行っています。この時の法名は「永厳宗寿禅定門」と記録されています。
嫡子の市川昌恒は、後に
大番を務めるなど、市川家は
江戸時代を通じて存続しました。
まとめ
市川昌倚は、
武田氏滅亡という激動の時代を生き抜き、徳川家康の家臣として活躍した武将でした。養子として市川家を継ぎ、その後、徳川家康に仕えることで、市川家の発展に貢献しました。彼の生涯は、戦国時代から
江戸時代への移行期における武士の生き方を象徴しています。
参考資料
*
丸島和洋「市川昌倚」「
市川家光」 柴辻俊六・平山優・黒田基樹・
丸島和洋編『
武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年