市橋氏

市橋氏：戦国から明治へ至る武家の歴史

市橋氏は、美濃国池田郡市橋郷を起源とする武家・華族の家系です。その歴史は古く、大和源氏の祖である源頼親を祖とする系譜を伝えられています。承久の乱における功績から、頼親の末裔である成田光治が美濃池田郡市橋庄の地頭に任命されたことが、市橋氏の始まりとされています。ただし、実際には光治の弟である光重が市橋の地頭となり、市橋姓を名乗ったとされています。

市橋家の系譜は戦国時代前期に一度途絶えましたが、その後養子を迎え再興を果たしました。しかし、戦国時代中期の長勝の代に至るまで、その出自や系譜には不明な点が多く残されています。

戦国時代中期には、長利が美濃国の有力者斎藤道三に仕え、道三の死後はその子である斎藤義龍、龍興に仕えました。織田信長の台頭後は信長に仕え、信長没後は豊臣秀吉に仕えることとなります。秀吉の下で活躍した長勝は、今尾で1万石の所領を与えられ、大名に列せられました。

豊臣秀吉の死後、市橋氏は徳川家康に接近し、関ヶ原の戦いで東軍に属したことで、伯耆矢橋藩2万1300石に加増されました。その後、越後国三条藩4万1300石に転封されましたが、長勝が子を残さず没したため、元和6年（1620年）に改易されました。

長勝の甥である長政が近江国仁正寺藩（現在の滋賀県蒲生郡日野町）2万石を与えられ、市橋家の家督を継承しました。その後、領地は分割され、文久2年（1862年）には仁正寺藩から西大路藩と改称されました。

明治維新後、最後の藩主である市橋長義は版籍奉還により西大路藩知事となり、廃藩置県までその職を務めました。明治2年（1869年）の華族制度発布により、市橋家は華族に列せられました。明治17年（1884年）の華族令施行に伴い、子爵に叙せられました。

市橋家の邸宅は、昭和前期には東京市杉並区堀之内町にありました。市橋家は、戦国時代から明治時代にかけて、時代に合わせて変化し、生き抜いてきた歴史を持つ家系と言えるでしょう。その系譜は複雑で、多くの謎を含んでいますが、日本の歴史において重要な役割を果たした家系であることは間違いありません。 様々な史料を紐解き、その詳細な歴史を明らかにしていくことは、今後の研究課題と言えるでしょう。 本稿では、既知の史料に基づいて市橋氏の歴史を記述しましたが、更なる研究により、より詳細な歴史像が明らかになる可能性があります。

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年
新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』東京堂出版、1984年
『三百藩藩主人名事典』（新人物往来社）
『江戸三百藩藩主総覧』（新人物往来社）

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