希望にみちた二人のために

ジャッキー吉川とブルー・コメッツ「希望にみちた二人のために」

「希望にみちた二人のために」（きぼうにみちたふたりのために）は、1972年2月10日に、日本の人気グループ、ジャッキー吉川とブルー・コメッツによってリリースされたシングルレコードである。グループにとっては通算22枚目にあたる作品として発表された。

この楽曲の作詞は、多くのヒット曲を手掛けた作詞家、橋本淳が担当。作曲は、グループのギタリストであり、ボーカルも兼任していた三原綱木が手掛けた。さらに編曲は、当時さまざまなアーティストの楽曲に関わっていた高田弘が担っている。本シングルに収録された2曲は、いずれも作詞を橋本淳が、編曲を高田弘が担当している。

A面「希望にみちた二人のために」

A面に収められた表題曲は、作詞の橋本淳と作曲の三原綱木というコンビによる作品としては、「雨の赤坂」「津軽の海」に続く3作目となる。ボーカルは、作曲者である三原綱木がソロで歌唱しており、彼がリードボーカルを務める楽曲としても注目される。

楽曲は全体的にバラード調で構成されている。イントロはピアノのみによる静かな響きから始まり、そこに三原綱木のソロボーカルが優しく入ってくるという流れが特徴的である。こうした構成やメロディーラインには、当時の洋楽、特にビートルズの楽曲からの影響が指摘されている。具体的には、静かなピアノのイントロを持つ「レット・イット・ビー」や、感情豊かなバラードである「ヘイ・ジュード」といった楽曲の雰囲気を意識していたものと考えられている。これは、当時の日本の音楽シーンが海外の最新音楽に強く影響を受けながら発展していた時代背景を反映していると言えるだろう。

サウンドプロダクションの面でも、いくつかの実験的な試みが見られる。楽曲のサビの部分では、声に特殊な加工を施す「ラジオボイス」と呼ばれる音響効果が導入されている。これにより、歌声に独特の質感とアクセントが加えられている。また、歌詞の中にごく短いながらも英語のフレーズが用いられている点も、当時の日本の歌謡曲としては比較的珍しい試みであった。これらの要素は、グループが音楽的な探求を続け、新しいサウンドを取り入れようとしていた姿勢を示すものと言える。

商業的な評価とグループの転換

しかしながら、当時の音楽シーンはグループサウンズ（GS）ブームが完全に終息し、新たな潮流へと変化しつつあった。先行シングルである「虹と雪のバラード」（札幌オリンピックのテーマ曲として広く知られたにもかかわらず、オリコンチャートでの上位ランクインは逃していた）に続き、この「希望にみちた二人のために」もまた、オリコンシングルチャートの100位圏内にランクインすることがなかった。これは、かつて一世を風靡したブルー・コメッツであっても、時代の変化に対応することの難しさを示していた。

このような商業的な苦戦は、グループの将来に大きな影響を与えることとなる。本作の次にリリースされたシングル「雨の朝の少女」を最後に、ジャッキー吉川とブルー・コメッツは1972年10月に大幅なメンバーチェンジを敢行する。これは、初期からの主要メンバーがグループを離れることを意味し、実質的にGSとしてのブルー・コメッツは、その活動に区切りをつけ、新たな形態へと移行することとなった。したがって、「希望にみちた二人のために」は、オリジナルメンバーによるブルー・コメッツの歴史において、その終焉期を象徴する重要な楽曲として位置づけられる。

B面「想い出の彼方に」

本シングルのB面には、「想い出の彼方に」という楽曲が収録されている。こちらも作詞は橋本淳が担当し、作曲はブルー・コメッツのメンバーである井上忠夫（後に井上大輔として活動）が手掛けた。編曲はA面と同じく高田弘が担当している。

この楽曲は、バックコーラスの入れ方や楽器の演奏スタイルなどから、当時の1970年代アメリカン・ポップスの影響を強く受けたサウンドが特徴となっている。A面の情感豊かなバラードとは対照的な、明るく洗練されたポップスであり、ブルー・コメッツが持っていた音楽的な幅広さを示す一例と言えるだろう。

レコードジャケット

当時のシングル盤のジャケットデザインは、落ち着いた小豆色（あずきいろ）の外枠が特徴的である。その中央部分には、グループのメンバー全員が揃った集合写真が配置されており、視覚的にも当時の雰囲気を伝えるデザインとなっている。

収録曲

関連項目

* 1972年の音楽

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