虹と雪のバラード

1972年札幌オリンピックのテーマソング「虹と雪のバラード」：長く愛される歌の軌跡

1972年札幌オリンピックのテーマソングとして制作された「虹と雪のバラード」は、作詞：河邨文一郎、作曲：村井邦彦による名曲です。五輪開幕2年前の1970年、NHKは河邨文一郎氏に作詞を依頼。依頼内容には、イベント後も長く歌い継がれること、札幌市民のオリンピックへの期待感を表現すること、そして堅苦しい式典風ではなく、親しみやすい庶民的なバラードであること、といった要望が含まれていました。

河邨氏は当初、構想に苦しみ、2週間もの間、作詞に手が止まったと言われています。しかし、彼はNHKの意図を深く受け止め、北海道と北欧、シベリア、アラスカ、カナダといった北方圏住民の連帯感を表現することに焦点を当てました。「純白の天地に七色の虹を掲げ、国々を繋ぐ」というイメージを曲名に込め、庶民的なバラードとして完成させました。

1971年2月から3月にはNHK『みんなのうた』で放送され、その後、多くの歌手が競作としてこの曲を歌いました。トワ・エ・モワ、黛ジュン、菅原洋一、ピンキーとキラーズ、佐良直美、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、スクールメイツなど、錚々たる顔ぶれです。しかし、最終的にはトワ・エ・モワのバージョンが広く普及し、同年の『第22回NHK紅白歌合戦』でも披露されました。

オリンピック後も、「虹と雪のバラード」は日本の高校の音楽教科書に何度か掲載されるなど、世代を超えて歌い継がれてきました。2003年には、作詞者である河邨文一郎氏の縁のある札幌医科大学で、トワ・エ・モワが詩碑建立を提案。2005年、大倉山ジャンプ競技場に詩碑が建立され、除幕式にはトワ・エ・モワも参加しました。

2011年からは「みんなのうた発掘プロジェクト」の一環として、当時の映像が提供され、41年ぶりに再放送されるなど、その人気は衰えることを知りません。現在でも学校唱歌として使用される他、CMソングとしても使われ、札幌雪まつり会場でも頻繁に流されるなど、札幌を代表する歌として親しまれています。2019年には、札幌市営地下鉄の到着メロディーにも採用されましたが、2030年冬季オリンピックの札幌招致活動の停止に伴い、2024年3月に廃止される予定です。

特にトワ・エ・モワ版は、1971年8月25日に発売され、オリコンチャート7位まで上昇、60万枚の売上を記録しました。トワ・エ・モワの白鳥英美子氏は、河邨氏の歌詞について「詩人ならではの深い言葉遣い」と評しています。編曲はシングルバージョンと『みんなのうた』バージョンで異なり、後者ではホルンのファンファーレが特徴的です。

他にもジャッキー吉川とブルー・コメッツ、西六郷少年少女合唱団、布施明、天地真理、岩河三郎、松山千春、野宮真貴 with 横山剣 from クレイジーケンバンド、ステージ101、上杉周大 feat.南壽あさ子など、多くのアーティストがカバーしています。

「虹と雪のバラード」は、単なるオリンピックのテーマソングとしてだけでなく、時代を超えて人々の心を繋ぐ、普遍的な名曲として、これからも歌い継がれていくことでしょう。

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