帝国行進曲 (エルガー)

《帝国行進曲》について

《帝国行進曲》（ていこくこうしんきょく、英: Imperial March）は、イギリスの作曲家エドワード・エルガーが1897年に創作した管弦楽行進曲です。この作品は、同年のヴィクトリア女王の在位60周年を祝う式典のために委嘱されました。

背景

1896年、ノヴェロ社から依頼を受けたエルガーは、《帝国行進曲》と「ゲオルギオスと竜」伝説に基づくカンタータを手掛けることになりました。呈示された楽曲は、王室の記念行事にふさわしい荘厳なスタイルで構成されています。

この曲の初演は1897年4月19日、水晶宮で行われ、指揮はアウグスト・マンスが担当しました。初演後の1週間内には、水晶宮にて大楽団による演奏が行われ、その後も同年6月18日のステート・コンサートや、6月28日のロイヤル・ガーデン・パーティー、10月24日のアルバート・ホールでの英国砲兵隊バンドの演奏など、数々の場面で演奏されました。

《帝国行進曲》は、エルガーの出世作《エニグマ変奏曲》や行進曲《威風堂々》が世に出る前に作曲され、この曲がもたらした人気は、ロンドンの聴衆にエルガーの名を確実に印象付けることとなりました。

楽器編成

この行進曲は、多様な管弦楽器によって構成されています。主な楽器は以下の通りです：

• - フルート2（1名はピッコロも持ち替え）
• - オーボエ2
• - クラリネット2
• - ファゴット2
• - コントラファゴット
• - ホルン4
• - トランペット2
• - トロンボーン3
• - チューバ
• - ティンパニ3
• - 打楽器（大太鼓、シンバル、小太鼓）
• - 弦楽器五部

これだけの楽器編成により、非常に厚みのある音響が実現されています。

曲の構成

《帝国行進曲》は、4/4拍子で変ロ長調の厳かな静けさから始まります（譜例1）。しかしすぐにアニマートとなり、音量の増加と共に、初めに示したメロディが祝典的な雰囲気の中で奏でられます。中間部では、調性が変ホ長調に変わり、ここで第1ヴァイオリンとクラリネットが美しいメロディを引き立てます（譜例2）。

曲は最後に再びメインテーマが回帰し、譜例2によって導かれ、堂々たるコーダに繋がります。このように、コーダはたんかつ簡潔に、しかし壮大に曲のクライマックスを結実させます。

演奏時間は約5分であり、記念すべき式典を彩るのに相応しい、力強い作品に仕上がっています。

参考文献

本楽曲に関する情報を知る上で参考となる文献として、以下のものが挙げられます。
1. Kennedy, Michael (1987). Portrait of Elgar. Oxford: Clarendon Press.
2. Moore, Jerrold N. (1984). Edward Elgar: a Creative Life. Oxford: Oxford University Press.
3. Young, Percy M. (1973). Elgar O.M.: a study of a musician. London: Collins.

このように《帝国行進曲》は、エルガーの音楽キャリアにおいて重要な位置を占める作品であり、彼の名声を一気に高める要因となった曲の一つであるといえます。

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