師逵

師逵（し き、1366年 - 1427年）は、明代に活躍した官僚であり、字は九達と称した。彼の出身は東平府東阿県である。

生涯

師逵は幼くして父を失い、母に孝養を尽くして育った。洪武年間には、国子生として御史に従い事件調査に携わるも、御史に弾劾され逮捕されるという経験もしている。しかし、洪武帝はその風貌に感銘を受け釈放。その後、御史台の書案牘に配属され、官僚としてのキャリアをスタートさせた。長らくを経て御史に抜擢されると、陝西按察使に転じた。母の死をきっかけに一度は官を辞し喪に服したが、1402年、永楽帝の即位に伴い兵部右侍郎として再び召し出され、その後、吏部右侍郎へと転じた。

1406年には、北京の宮殿建設のため、湖広へ派遣され木材の伐採を監督。1409年には、その厳格な監督ぶりが左中允の周幹らによって弾劾されるが、皇太子朱高熾の計らいにより不問に付された。1410年には、永楽帝の漠北遠征において、糧食の補給輸送を総督するよう命じられた。1413年、木材運送が停止されると南京に召還され、1416年には青州に漢邸を建設する任務を遂行。1422年には、吏部右侍郎のまま南京礼部侍郎を代行した。

1424年8月、洪熙帝（朱高熾）が即位すると、師逵は南京戸部尚書に進み、吏部を兼掌した。1427年1月、在官のまま62歳でその生涯を閉じた。彼には8人の子供がいた。

人物・逸話

師逵の逸話はいくつか残されている。13歳の時、病に伏した母が藤の花の菜を所望した際、師逵は遠方まで探し求め、夜道で虎に遭遇するも、天を仰ぎ助けを求めると、虎は彼を放置して去ったという。この出来事の後、母の病は快方に向かったという。

陝西按察使時代には、1000人もの未決囚の処分をわずか10日ほどで決定し、全員を有罪としたという逸話は、彼の決断力と厳格さを示すものとして語り継がれている。

また、母の死後、官を辞して帰郷した際には、墓のそばに廬を建て、3年間酒と肉を断つなど、その孝行ぶりは特筆される。

湖広での木材伐採監督では、10万人の民衆を動員して事業を推し進めたが、その厳しすぎる監督は民衆の反発を招き、多くが李法良の反乱に加担する結果となった。

吏部では、蹇義を補佐すること20年に及んだが、師逵の性格を知っていたため、彼に私的な依頼を持ちかける者はいなかったという。また、師逵は私財を蓄えることなく、俸禄や賜物を全て宗党に分け与えた。永楽帝は、「六部の扈従の臣の中で、貪欲でないのは師逵だけだ」と評したという。

これらの逸話からもわかるように、師逵は時に厳格でありながら、清廉潔白で私欲を追求しない人物であった。その生涯は、明代の官僚の一つの典型として、後世に語り継がれている。

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