常久寺

龍遊山 常久寺

岐阜県恵那市三郷町佐々良木に位置する常久寺は、臨済宗妙心寺派に属する寺院で、山号を龍遊山と称します。中部四十九薬師霊場三十四番札所、恵那三十三観音霊場二十三番札所としても知られています。信光寺（瑞浪市）の末寺であり、地域の人々に親しまれています。

歴史

常久寺の歴史は、16世紀初頭の文亀・永正年間（1501年～1521年）に遡ります。光月源公首座という僧侶が、佐々良木の杉ヶ洞に小さな草庵を建てたのが始まりとされています。その後、本如実性を招いて開山し、龍遊山 常久寺と命名されました。元和元年（1615年）には現在地に移転しました。

寺に残る最も古い過去帳は承応2年（1653年）のもので、そこには「龍遊山 常久寺」と記されています。しかし、同年の検地帳には「杉ヶ洞 常久寺」と記載されており、当時の寺の所在地が記録によって異なっていたことが伺えます。寛文9年（1669年）には、六世住職の乳峰西堂によって方丈の前に十王堂が建立され、十王尊が安置されました。さらに寛文10年（1670年）には、畑中の成瀬氏の母が浄財を寄進し、薬師堂（禅庵）が建立されました。乳峰西堂が開山となり、薬師瑠璃光如来を勧請し、祖先の冥福と人々の健康を祈願したと伝えられています。

明治38年（1905年）の記録によると、足立庄右衛門が折戸の山地を七世住職の湘山潭公に寄進したことで、寺は杉ヶ洞から折戸に移ったとされています。元禄15年（1702年）には山号を昌澤山に改めましたが、平成12年（2000年）に旧称の龍遊山に復しました。九世住職の棟岩梁公（1742年没）の時代には方丈が再建され、十二世住職の笑堂全識は京都で和尚の位を得て、寺格が平僧地から和尚地に格上げされました。

寛政7年（1795年）には梵鐘が鋳造され、享和2年（1802年）には碧巌録大会が催されました。十三世住職の恭堂恵謙は隠寮・長屋・土蔵を建立し、十五世住職の観界恵音の時代には、縦十一間、横五間の草葺の庫裡が再建されました。最盛期には、千手観音、馬頭観音、十一面観音、子安観音、如意輪観音など多くの観音像が祀られ、地蔵菩薩、阿弥陀如来、薬師瑠璃光如来を祀る堂宇も存在しましたが、明治維新の神仏分離によって、薬師堂や庚申堂は取り壊され、仏像は十王堂に移されました。現在、薬師如来像は本堂の須弥壇左脇に安置され、日光菩薩、月光菩薩、十二神将、四天王が脇侍として祀られています。

明治時代以降、苗木藩の廃仏毀釈により心観寺を失った中野方村では、常久寺が法事を執り行っていました。昭和7年（1932年）には、本堂と開山堂が再建され、屋根が瓦葺となりました。昭和52年（1977年）には鐘楼が再建され、梵鐘も再鋳されています。境内は段丘になっており、薬医門が構えられ、前庭は白砂青松の美しい景観を呈しています。

寺宝

常久寺には、恵那市指定文化財となっている貴重な寺宝が数多く所蔵されています。

木造達磨大師座像: 室町時代後期（16世紀後半）に制作されたもので、像高31.6cm、寄木造、彩色、玉眼という特徴を持ちます。
木造地蔵菩薩半跏像: 室町時代末期から江戸時代初期（16世紀末～17世紀初頭）に制作されたとされ、像高43.6cm、寄木造、彩色、玉眼の像です。
釈迦十六善神図: 享保元年（1716年）に描かれたものです。
釈迦涅槃図: 享保11年（1726年）に描かれた両軸の涅槃図です。
福禄寿画: 狩野栄川によって描かれたものです。
山水図: 狩野常信の作品です。
大般若経と十六善神図: 南陽山 神護寺に伝わったもので、足立新七郎が寄進した大般若経600巻と十六善神の掛け軸です。神護寺が廃寺となった際に足立家に返されましたが、後に常久寺に寄進されました。

境内

常久寺の境内には、本堂、開山堂、十王堂、薬師堂などがあり、それぞれが歴史と信仰を物語っています。美しい白砂青松の前庭は、訪れる人々の心を癒します。

参考文献

『三郷村史』　石田彌三郎　昭和18年(1943年)
『恵那市史』　1989年
『恵那郡史』　恵那郡教育会　1926年
* 『中部四十九薬師巡礼』　中部四十九薬師霊場会　冨永航平　朱鷺書房　1999年

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