常広城

常広城の概要

常広城（つねひろじょう）は、佐賀県鹿島市常広に存在した平山城です。城は、塩田川と鹿島川の間に広がる沖積低地に立地し、海岸線からは約2キロメートルの距離にあります。この地域は水害が発生しやすい環境にありましたが、それでも城は歴史的に重要な役割を果たしてきました。

立地・構造

常広城は、周囲の自然環境に巧みに溶け込んだ形で構築されました。東西に最大約230間、南北に約180間の曲輪が広がり、全長は893間を超える土手や二重の堀に囲まれていました。城の中央には内堀に守られた本丸が位置し、そこには池を伴う松林が広がっており「園」とも称されていました。この本丸の敷地は、現在の北鹿島小学校と重なっており、周囲よりも約1.2メートル高い標高を持っています。また、城の外郭部分には家臣の屋敷や3階建ての武庫が存在したとされています。

南西には鹿島町と呼ばれる城下町が広がり、歴史的には一帯は鹿島町（賀島町）と名付けられていました。標高が1.5から2メートル程度の低地に位置し、有明海に近いため、増水時には特に多くの水害が発生していました。これを防ぐために南北に長い土手が築かれ、高楼も設けられていたとのことです。

歴史

常広城の正確な築城年代については記録が曖昧ですが、承応元年（1652年）に築城されたとされる文献が存在します。一方で、慶長の肥前国絵図には同城が描かれているため、承応元年以前からその基盤が整っていた可能性が高いと言われています。

特に、天正4年（1576年）には龍造寺隆信が有馬氏を破り、その後「鹿島の城」として鍋島信房が配置されていたという記録が残っています。この城は、先代の田代城と考えられており、信房は後に他の城に移ることとなります。

慶長14年（1609年）には、佐賀藩から分封されて鹿島藩が成立し、初代藩主である鍋島忠茂が田代の城に入城しました。その後も城は代々の藩主の居館として使用されましたが、繰り返される水害に悩まされ、9代藩主の鍋島直彜は新たな居所への移転を決定します。

最終的に、文化4年（1821年）に新たな鹿島城が築かれ、常広城は廃城となりました。現在、その跡地には北鹿島小学校が建設されており、一帯は「古城」と名付けられています。また、祐徳稲荷神社には常広城に使用されていたと伝えられる欄間が残されています。

参考文献

1. 鹿島市史編纂委員会 編『鹿島市史 中巻』鹿島市、1974年。
2. 角川日本地名大辞典編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 41.佐賀県』角川書店、1982年。
3. 江島賢一 著、鹿島市教育委員会 編『常広城跡』鹿島市教育委員会〈鹿島市文化財調査報告書 第18巻〉、2010年3月31日。

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