常澄村

常澄村

常澄村は、かつて茨城県東茨城郡に属していた村です。1955年（昭和30年）に稲荷村、大場村、下大野村が合併して誕生し、1992年（平成4年）3月3日に水戸市に編入されるまで存続しました。現在の水戸市の東端部にあたる地域です。

概要

県庁所在地である水戸市に近接していた常澄村は、人口がおよそ1万人規模の村でした。周辺の主要都市と比較すると人口密度は低く、一平方キロメートルあたり約350人程度であり、のどかな農村地帯の性格が強い地域でした。しかし、水戸市の郊外としての機能が期待されたことや、1980年代以降に進められた新東京国際空港（現：成田国際空港）開港に伴う国道51号の整備、鹿島港の開発、大洗鹿島線の開業といった県東部の開発の波を受け、村の西側では「大串団地」と呼ばれる大規模な住宅地開発も進められました。これにより、かつて高度経済成長期に都市部への人口流出で減少した人口は一転して増加に転じ、水戸市との合併直前には再び1万人台を回復していました。

一方で、村の財政基盤は脆弱であり、下水道や道路といった生活基盤の整備を村単独で行うことが困難な状況でした。当時の村長は、このような状況を打開するため、水戸市への合併を積極的に模索していたと言われています。

地理

村は那珂川の河口付近に位置しており、面積の約六割を占める広大な低地が広がっていました。この低地の大部分は水田として利用されており、村の主要な景観を形成していました。西側には台地があり、地形に変化が見られます。村内を流れる主要な河川としては、那珂川と涸沼川がありました。

産業

常澄村の産業は、第一次産業と第二次産業が中心でした。

第一次産業
低地部では、米作が特に盛んに行われていましたが、生産過剰期には休耕や転作も行われました。
台地上では畑作が中心で、1980年代頃からは水戸市の近郊農業地域として、野菜や果樹の栽培が増加しました。
かつては林業も重要な産業であり、マツ、スギ、ヒノキなどが用材や燃料として供給されていました。
那珂川や涸沼川では水産業も営まれ、シジミやサケなどが漁獲されていたと記録されています。
第二次産業
国道51号や国道245号といった主要道路沿線では、積極的に工場誘致が進められました。
製造業が主体で、エレベーター部品製造（三和工業など）、鉄鋼加工、食料品加工、瓦製造、印刷業などが行われていました。

交通

村内の交通を担っていたのは、道路と鉄道です。

鉄道
1985年（昭和60年）3月14日、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線が開業し、村内に常澄駅が設置されました。これにより、1966年（昭和41年）に茨城交通水浜線が廃止されて以来、19年ぶりに村に鉄道が通るようになりました。
道路
一般国道としては、国道51号（大洗バイパス）と国道245号が村内を縦断していました。
主要地方道として茨城県道2号水戸鉾田佐原線、茨城県道40号内原塩崎線があり、その他にも複数の一般県道が村内を結んでいました。

教育

村内には複数の教育施設が設置されていました。幼稚園・保育所は常澄村立大場幼稚園、下大野幼稚園、稲荷第一幼稚園、稲荷第二幼稚園、常澄保育所があり、小中学校としては常澄村立大場小学校、下大野小学校、稲荷第一小学校、稲荷第二小学校、そして常澄中学校がありました。

歴史の主な出来事

1955年（昭和30年）3月31日 - 東茨城郡稲荷村、大場村、下大野村が新設合併し常澄村が発足。
1960年（昭和35年）1月1日 - 村章を制定。
1966年（昭和41年）6月1日 - 茨城交通水浜線が廃止。
1985年（昭和60年）3月14日 - 鹿島臨海鉄道大洗鹿島線が開業し、常澄駅が開業。
1992年（平成4年）3月3日 - 水戸市へ編入され、村の歴史に幕を下ろしました。

水戸市への編入により常澄村は消滅しましたが、その地域は現在も水戸市の一部として、かつての村の特色を一部に残しながら発展を続けています。

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