幌尻岳

幌尻岳：北海道日高山脈の難関峰

幌尻岳は、北海道の日高山脈にそびえる標高2,052mの山です。日高山脈の主峰として知られていますが、主稜線からはやや西に離れた位置にあり、その雄大な姿は古くから人々を魅了してきました。日高山脈襟裳十勝国立公園内に位置し、山頂には二等三角点が設置されています。深田久弥の『日本百名山』にも選定されており、アイヌ語で「大きな山」を意味する名前を持つこの山は、多くの登山家を惹きつけると同時に、その険しさから畏敬の念を抱かせる存在でもあります。

1300万年の歴史と豊かな自然

約1300万年前の造山活動によって誕生した幌尻岳は、長い年月を経て現在の姿となりました。山体上部には、最終氷期に形成されたカール地形である「七つ沼カール」が存在し、その独特の景観は2007年に日本の地質百選に選定されています。この地域には、ナキウサギやクマゲラなどの希少な動植物が生息しており、豊かな自然環境を育んでいます。平取町の二風谷地域などでは、遠くからでも目立つ存在だった幌尻岳は、古くから神聖な山として崇められてきました。

標高の変遷と登山ルート

幌尻岳の標高は、かつて2,052mとされていましたが、2008年には2,053mに改定され、その後2014年には再び2,052mとなりました。登山ルートは、平取町、新冠町、日高町からアプローチするルートがあり、芽室町から伏美岳・ピパイロ岳を経由して登ることも可能です。中でも、平取町からのルートは山頂までの距離が最も短く、変化に富んだ風景を楽しめることから最も一般的なルートとして知られています。しかし、多くの渡渉を伴う難易度が高いルートであることから、「日本百名山の中で最難関の山」と言われることもあります。

平取町ルート（振内コース）

このルートは、平取町豊糠地区の「とよぬか山荘」からシャトルバスを利用して糠平・幌尻林道の第2ゲートまでアクセスします。林道は2011年から一般車両通行止めとなり、シャトルバスの利用が必須です。ゲートから先は、額平川沿いを遡上する沢登りが続きます。7月頃は腰まで、9月でも膝下程度の深さの沢を十数回渡渉するため、沢登りの装備が不可欠です。雨天時は増水による危険性が高く、過去には遭難事故も発生しています。途中に「幌尻山荘」があり、宿泊が可能です。山荘は平取町の所有で、夏季のみ管理人が常駐し、寝具の貸し出しを行っています。

新冠町ルート（幌尻岳新冠陽希コース）

新冠町ルートは、「イドンナップ山荘」からスタートし、奥新冠ダムを経由して「新冠ポロシリ山荘」まで林道を歩きます。この区間は約19kmと長く、北電の管理道路を許可を得て通行します。山荘からは新冠川支流沿いを進み、尾根に取り付いて山頂を目指します。平取町ルートに比べ渡渉は少ないですが、林道歩きが長く、体力が必要です。このルートは、プロアドベンチャーレーサー田中陽希氏によって命名されたもので、自転車などの利用を避け、徒歩で挑戦することを推奨しています。山荘は避難小屋として利用でき、食事や寝具の提供はありません。

日高町ルート（千呂露川二岐沢コース）

日高町ルートは、チロロ林道の終点から二岐沢沿いを進み、尾根に取り付いてヌカビラ岳、北戸蔦別岳、戸蔦別岳を経由して山頂に至るルートです。途中に山小屋はなく、野営が一般的ですが、適切な野営地は少ないです。このルートでも遭難事故が発生しているため、十分な準備と注意が必要です。

まとめ

幌尻岳は、その歴史、自然、そして険しい登山ルートによって、多くの登山家を魅了する山です。挑戦する際には、十分な計画、装備、体力、そして周囲への配慮が必要です。過去に多くの遭難事故が発生していることを踏まえ、安全第一で登山計画を立て、無理のない登山を心がけましょう。各ルートの詳細や山小屋の情報は、平取町、新冠町、日高町のホームページなどで確認できます。

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