平和と人権イニシアティヴ

平和と人権イニシアティヴ（IFM）：東ドイツ民主化運動の先駆者

平和と人権イニシアティヴ（ドイツ語: Initiative Frieden und Menschenrechte, IFM）は、1980年代の東ドイツ（ドイツ民主共和国）において、市民による反体制運動の草分け的存在として重要な役割を果たしました。1986年に設立されたIFMは、その名の通り、平和主義と人権擁護を活動の中心に据え、東ドイツ社会における自由と民主主義を求める人々の拠り所となりました。

プロテスタント教会との連携

IFMの活動は、東ドイツにおいて国家からの独立性を比較的保っていたプロテスタント教会との連携に大きく依存していました。教会は、IFMのメンバーにとって集会や情報交換の場となり、体制批判的な活動を支える重要な役割を果たしました。しかし、主要メンバーが逮捕されるなど、活動が停滞する時期もありました。

東欧革命と民主化運動の活発化

1989年秋、東欧革命の波が東ドイツにも押し寄せると、IFMの活動は再び活発化します。民主化を求める人々の声は日増しに大きくなり、IFMは穏健な立場から民主化運動を牽引しました。ベルリンの壁崩壊へと繋がる一連の出来事において、IFMは重要な役割を果たし、東ドイツ社会の変革に大きく貢献しました。

東ドイツ初の自由選挙とその後

1990年、IFMの創設者の一人であるGerd Poppeが、ハンス・モドロウ内閣に無任所相として入閣しました。その後、IFMは新フォーラム、民主主義を今と連携し、政党連合・同盟90を結成。東ドイツ最初で最後の自由選挙となった1990年3月18日の人民議会選挙では、2.9％の得票を獲得し、12名の当選者を輩出しました（うちIFMからは2名）。

東西ドイツ再統一後の1990年12月2日の連邦議会選挙では、同盟90と東ドイツ緑の党が統一候補を擁立し、8名が当選（うちIFMからは1名）。IFMは、再統一後もドイツの政治に影響を与え続けました。

同盟90/緑の党への合流

1991年9月21日、同盟90が政党連合から単一政党となると、IFMもこれに合流しました。その後、同盟90は緑の党と合併し、同盟90/緑の党を結成。IFMの元メンバーの多くもこの新党に参加し、ドイツの政治における環境保護と人権擁護の推進に貢献しています。

IFMは、東ドイツの民主化運動における重要な一翼を担い、その活動は、後のドイツ統一と、統一ドイツにおける民主主義の発展に大きく貢献しました。IFMの歴史は、市民社会の力と、平和と人権を求める人々の不屈の精神を象徴するものとして、記憶されるべきでしょう。

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