新フォーラム

新フォーラム（Neues Forum）

新フォーラムは、1989年の東ドイツ民主化運動の中で結成された重要な市民団体です。当時の社会主義統一党による権威主義的な体制下において、民主的な社会改革を求める人々の声に応える形で誕生しました。

結成の背景

1980年代後半、東欧諸国では民主化の波が押し寄せていました。ポーランドの連帯やハンガリーの国境開放といった出来事が、東ドイツの人々にも影響を与え、変化への期待が高まっていました。そのような状況下、新フォーラムはプロテスタント教会外で初めての反体制運動として登場し、社会の民主化を求める人々の支持を集めました。

メンバーには、ベアベル・ボーライやラインハルト・マイネルなど、平和運動の活動家が名を連ね、1989年9月には「Aufbruch 89 - Neues Forum」という宣言文を発表し、社会の民主的な改革を訴えました。しかし、当局は新フォーラムの登録を拒否し、その活動を「非合法」「反国家的」と見なしました。この対応は、かえって人々の怒りを買い、各地で抗議活動が激化するきっかけとなりました。

デモの高揚と公認

東ドイツ建国40周年記念式典に出席したミハイル・ゴルバチョフ書記長が、ホーネッカー体制への支持を明確にしなかったことが、民主化運動をさらに加速させました。ライプツィヒでは月曜デモが盛り上がりを見せ、ホーネッカーは退陣に追い込まれました。その後、エゴン・クレンツ政権も民主化の波を止めることができず、11月4日にはベルリンのアレクサンダー広場に100万人もの人々が集まり、民主化を求める大規模なデモが行われました。こうした状況の中、ついに11月8日、社会主義統一党は新フォーラムを在野団体として公認せざるを得なくなりました。その翌日にはベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツ統一への道が開かれました。

急速な成長と分裂

新フォーラムは、東ドイツの民主化を求める市民運動の中核として急速に成長し、1989年末には1万人以上の正式メンバーと20万人以上の賛同者を集めました。しかし、その過程で、政治団体として政党化を目指すか、市民団体として草の根運動を続けるかという路線の違いから内部対立が表面化しました。また、社会主義に対する姿勢についても、中道左派的な社会民主主義路線を支持するグループと、西側の自由主義・資本主義導入を目指すグループとの間で意見が分かれました。後者のグループは1990年1月、ドイツ・フォーラム党を結成して分裂しました。

初の自由選挙での失速

1990年2月、初の自由選挙となる人民議会選挙を前に、新フォーラムは民主主義を今、平和と人権イニシアティヴと選挙連合「同盟90」を結成しました。しかし、当時の人々の関心は、東ドイツの民主化から東西ドイツ統一後の生活や経済へと急速に移り、ドイツキリスト教民主同盟への支持が高まりました。その結果、同盟90は人民議会選挙で2.9％の得票率にとどまり、12議席しか獲得できませんでした。

その後

東西ドイツ再統一後、1993年に同盟90が緑の党と合流し、「同盟90/緑の党」となりました。新フォーラムのメンバーの多くもここに加わりましたが、ヨアヒム・ガウクのように政治から距離を置いた者や、フォーラムに留まることを選んだ者もいました。そのため、新フォーラムは現在も存続していますが、連邦議会や州議会で議席を得ることはできず、地方自治体レベルでの活動にとどまっています。その主義主張は、非暴力の草の根運動を継承し、あらゆる全体主義、排外主義、ネオ・ファシズム、スターリン主義、軍国主義、反ユダヤ主義、性差別、人種差別などへの反対を訴えています。

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