平安北道 (日本統治時代)

平安北道（ピョンアンプクト）

平安北道は、日本統治時代の朝鮮に存在した行政区画であり、現在の朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の平安北道と慈江道にまたがる地域を指します。道庁は新義州に置かれ、朝鮮半島の西北部に位置し、北は鴨緑江を隔てて満洲（中国東北部）と国境を接していました。東は咸鏡南道、南は平安南道と隣接しており、地理的に重要な場所でした。

概要

平安北道は、その地理的特性から、国境貿易や交通の要衝として機能しました。特に新義州は、満洲との鉄道接続を持つ国境の町であり、日本統治時代には、鴨緑江の豊富な水資源を利用した水力発電所である水豊ダムが建設され、地域における産業発展の基盤となりました。

人口構成

昭和11年の調査によると、平安北道の総人口は1,620,882人でした。その内訳は、内地人（日本人）が22,363人、朝鮮人が1,578,605人、その他が19,914人でした。この人口構成からも、この地域が朝鮮半島における主要な地域の一つであったことがうかがえます。

行政区分

昭和20年当時、平安北道は新義州府と、以下の郡によって構成されていました。

新義州府
義州郡：義州邑、威遠面、古館面、威化面、古城面、松長面、水鎮面、広坪面、加山面、玉尚面、古寧朔面、月華面、枇峴面
龍川郡：龍岩浦邑、府羅面、北中面、東下面、内中面、東上面、外下面、外上面、楊光面、楊下面、楊西面、薪島面
鉄山郡：鉄山面、柏梁面、扶西面、余閑面、站面、西林面
宣川郡：宣川邑、台山面、郡山面、南面、東面、水清面、深川面、龍淵面、新府面、雲従面
定州郡：定州邑、高案面、観舟面、安興面、玉泉面、臨浦面、郭山面、葛山面、徳彦面、南西面、大田面、古徳面、馬山面
博川郡：博川邑、東南面、徳安面、両嘉面、西面、嘉山面、青龍面、龍渓面
寧辺郡：寧辺面、梧里面、延山面、独山面、少林面、八院面、鳳山面、古城面、百嶺面、龍山面、南薪峴面、南松面、泰平面、北薪峴面
雲山郡：北鎮邑、雲山面、東新面、城面、委延面
泰川郡：泰川面、西城面、西面、南面、院面、長林面、東面、江東面、江西面
亀城郡：亀城面、東山面、五峰面、方峴面、西山面、蘆洞面、梨峴面、沙器面、館西面、天摩面
朔州郡：青水邑、朔州面、九曲面、南西面、外南面、水東面、両山面、水豊面
昌城郡：昌城面、新倉面、東倉面、大倉面、青山面
碧潼郡：碧潼面、雩時面、吾北面、加別面、鸛会面、城南面、松西面
楚山郡：楚山面、東面、南面、古面、豊面、江面、松面、桃源面、板面、城西面
渭原郡：渭原面、鳳山面、渭松面、和昌面、大徳面、崇正面、西泰面
熙川郡：熙川邑、東面、西面、南面、北面、真面、長洞面、東倉面、新豊面
江界郡：江界邑、満浦邑、吏西面、高山面、時中面、漁雷面、曲河面、従西面、従南面、公北面、干北面、城干面、外貴面、前川面、化京面、立館面、龍林面
慈城郡：慈城面、三豊面、梨坪面、慈下面、長土面、中江面
厚昌郡：厚昌面、東新面、東興面、南新面、七坪面

これらの郡は、さらに邑や面といった行政単位に細分化されていました。

司法・警察・軍事

平安北道には、新義州地方法院をはじめとする複数の裁判所が設置されており、法務行政が実施されていました。また、警察組織として平安北道警察部や、各地の警察署が置かれ、治安維持にあたっていました。憲兵隊も存在し、地域における軍事的な役割も担っていました。

税務・林政

税務署や税関が設置され、経済活動を支えていました。特に新義州税関は、満洲との貿易において重要な役割を果たしました。また、林業資源を管理するため、営林署も置かれていました。

気象

気象観測のため、新義州と中江鎮に測候所が設置されていました。

交通

鉄道網が整備されており、総督府鉄道の京義線や満浦線などが主要な路線でした。また、私鉄も運行していました。道路網も発達しており、京城義州線などの幹線道路が整備されていました。

港湾

新義州港や龍岩浦港などの港湾が整備され、海運業も活発でした。これらの港は、輸出入の拠点として機能しました。

鉱山

雲山金鉱をはじめとする複数の鉱山が存在し、資源開発が行われていました。

神社

平安神社をはじめ、各地に神社が建立され、信仰の場となっていました。

企業

道内には、鉱業、製造業、電気業、運輸業など、様々な分野の企業が存在しました。

マスメディア

朝鮮放送協会新義州放送局が開局し、ラジオ放送が開始されました。また、日本語新聞である鴨江日報も発行されていました。

出身有名人

平安北道出身の著名人としては、作家の李光洙、宗教家の文鮮明、マラソン選手の孫基禎、詩人の金素月、ジャーナリストの文一平や張俊河などが挙げられます。