平家納経

平家納経について

平家納経（へいけのうきょう）は、装飾された写経であり、平安時代に平家一門が厳島神社に奉納した重要な文化財です。この作品は、全体を通して30巻の『法華経』や1巻の『阿弥陀経』、1巻の『般若心経』に加え、平清盛自筆の願文が含まれています。また、経典を収めるための経箱や唐櫃も添えられ、これらは平家の繁栄を象徴するものとして制作されました。平家納経は当時の工芸技術の粋を集めたものであり、その華麗な装飾は今なお多くの人々を魅了しています。現在、この重要な作品は厳島神社に保管されており、一部は厳島神社宝物館で見ることができます。

制作と奉納の歴史

平家納経は、平清盛の発願によって制作が始まりました。清盛は一門の現世と未来の繁栄を祈り、家族や一族がそれぞれ一巻を筆写する形で、約3年をかけて完成させました。初めに一部が厳島神社に奉納され、最終的に全てが完成したのは仁安2年（1167年）でした。この作品は、平家の権勢の象徴として、その後も多くの人々に大切にされました。

時代を超えた修復と保存

安土桃山時代末の1602年には、戦国大名の福島正則がこの作品の修理を行い、その際に新たに蔦蒔絵の唐櫃が献納されました。この修理は、経典の見返し絵3巻が俵屋宗達風に新たに書かれたことでも知られています。さらに、江戸時代初期の1648年には浅野長晟も重修を行いました。

19世紀に入ると、1882年に東京で開催された内国絵画共進会で、平家納経は模写され、東京国立博物館にて現在も保管されています。この時期の模写は帝室技芸員の長命晏春によって行われ、非常に高い芸術的価値を持つ模本が作られました。

大正時代の副本制作

1914年、高山昇が厳島神社の宮司に就任し、文化事業を推進しました。この期間に、”平家納経”の保存状態が懸念され、副本の制作が計画されます。福井利吉郎の助言のもと、著名な文化人たちが資金を募り、田中親美という日本美術の技能者が副本を制作しました。田中は当時の最新技術を駆使して精巧な副本を完成させ、1925年に厳島神社に奉納しました。完成した副本は、後にさまざまな重要な文化財として取り扱われるようになります。

現在の保存状態と意義

1954年には、平家納経が国宝に指定され、その後も細やかな修復作業が続けられています。1985年から1988年には松井正光によって装飾金具が修復されました。こうして、平家納経は平安時代の文化を伝える重要な資料としての地位を確立したのです。現代においても、平家納経はその美しい装飾と歴史的価値により、多くの文化財愛好者や研究者に支持され続けています。

平家納経は、平安時代の宗教的な信仰や社会的な価値観、さらには当時の工芸技術を知る手がかりとなる作品です。これからもその魅力は多くの人々に語り継がれることでしょう。

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