高山昇

高山昇（たかやま のぼる）は、1864年（元治元年）に群馬県で生まれ、1950年（昭和25年）に87歳で生涯を終えた神職です。彼は、神道界の発展に大きく貢献し、特に伏見稲荷大社の宮司としての功績が知られています。

生い立ちと初期の活動

高山昇は、群馬県吾妻郡原町で、大宮巌鼓神社の神職である高山茂樹の長男として生まれました。1886年（明治19年）に皇典講究所師範科を卒業後、長崎県皇典講究所分所教授となり、キリスト教研究や西海神職連合会との交流を通じて、立花照夫などの盟友を得ました。また、筥崎宮宮司の葦津磯夫に師事し、神祇官興復運動にも参加しました。

神職としての活躍

1893年（明治26年）に帰郷後、高山は私学校を設立し、敬神愛国教育を推進しました。その後、静岡県の浅間神社（現・富士山本宮浅間大社）の宮司に就任し、懸案であった富士山頂奥宮の境内地を八合目以上と認定しました。この認定は、戦後の富士山境内地訴訟においても重要な根拠となりました。1899年（明治32年）には、宮城県の鹽竈神社の宮司となり、1900年（明治33年）には、伊勢神宮に新設された神部署の初代署長に就任しました。

また、1902年（明治35年）の國學院大學炎上事件においては、佐々木高行の特命を受け、皇典講究所幹事として復興事業を推進し、普通神職養成所の実現に尽力しました。1914年（大正3年）には、広島県の厳島神社の宮司に就任し、千畳閣の修復工事や平家納経の複本作成などの文化事業を推進しました。

伏見稲荷大社宮司としての功績

1924年（大正13年）、高山は官幣大社・稲荷神社（現・伏見稲荷大社）の宮司に就任しました。彼は、稲荷信仰の浄化と宣揚に努め、稲荷山に禊道場である清明舎を建設しました。また、神宮皇學館や國學院大學の学生を対象とした奨学資金を設立し、後進の育成にも力を注ぎました。さらに、講社組織を整備し、附属稲荷講社を設立しました。

高山は、稲荷大神の東京分祠を目指し、1929年（昭和4年）に東京都西東京市に東伏見稲荷神社を創建しました。この計画には、京都の本社の全面的な支援と、葦津耕次郎や今泉定助らの賛同がありました。

晩年と業績

1936年（昭和11年）に稲荷神社宮司を退任後も、高山は稲荷信仰の普及に尽力しました。神奈川県藤沢市鵠沼に附属稲荷講社鵠沼支部を設立し、禊錬成道場を建設しました。1943年（昭和18年）には、鵠沼伏見稲荷神社を創建し、地域住民の信仰を集めました。

終戦後、高山は神社本庁創設に向けた活動を後見し、神社本庁顧問を務めました。1950年（昭和25年）に鵠沼海岸で生涯を終え、大宮巌鼓神社近くの先祖累代の墓所に葬られました。

高山昇の評価

高山昇は、明治から昭和にかけての激動の時代に、神道界の発展に大きく貢献した人物です。彼は、教育機関の復興や人材育成、稲荷信仰の普及に尽力し、その功績は後世にまで語り継がれています。また、富士山頂奥宮の境内地認定や、各地の神社の整備にも携わり、神道界の発展に大きな足跡を残しました。

参考文献
葦津珍彦『一神道人の生涯：高山昇先生を回想して』東伏見稲荷神社、1992年
児玉幸多 編『藤沢-わがまちのあゆみ-』（増補）藤沢市文書館、1984年
鵠沼を語る会『会誌〈鵠沼〉』第94号、2007年
伏見稲荷大社講務本庁 編『稲荷講誌第二』1978年

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