平岸村

平岸村（ひらぎしむら）

平岸村は、かつて北海道石狩国札幌郡に存在した村で、現在の札幌市豊平区と南区にまたがる地域です。1871年に入植が始まり、翌1872年に開村しました。初期には麻の栽培が盛んであったため、「麻畑村（あさはたむら）」とも呼ばれていました。

歴史

1871年（明治4年）、岩手県からの入植者202人62戸が平岸村の領域に入植しました。彼らは平岸地域を開拓するために、平岸街道（現在の平岸通）や平岸用水を開削しました。1879年（明治12年）には、お雇い外国人のエドウィン・ダンの提案により真駒内用水も開かれ、農業用水の確保に貢献しました。

平岸村は、国内で初めてヨーロッパ種のリンゴが実った地としても知られています。リンゴ栽培は村の重要な産業となり、1884年（明治17年）頃には「平岸リンゴ」として海外にも輸出されるほどの産地となりました。

1902年（明治35年）4月1日、平岸村は月寒村と共に豊平村と合併し、北海道二級町村制による豊平村（のちの豊平町）の一部となりました。

寺社

『新札幌市史』によると、平岸村には以下の神社がありました。

中の島神社（1877年頃創建）
花岡神社（1882年）
石山神社（1885年）
札幌神社遙拝所（1895年、のちに相馬神社へと発展）

仏教寺院としては、浄土宗長専寺（1896年創建）がありました。

領域

平岸村の領域は、現在の札幌市の豊平区と南区にまたがっていました。

現在の札幌市豊平区：平岸、美園、中の島
現在の札幌市南区：澄川、真駒内、石山、常盤、藤野、簾舞、砥山、豊滝、定山渓

文化

平岸村は、豊かな自然と開拓の歴史を持つ地域です。平岸リンゴはその象徴であり、村の発展に大きく貢献しました。また、定山渓温泉は、美泉定山によって発見され、湯治場として発展しました。これらの歴史的な背景から、平岸村は独自の文化を育んできました。

現在

平岸村は、現在の札幌市の一部となり、豊平区と南区に分かれています。平岸の地名は、豊平区の地名として残っており、平岸通などの道路名にもその名残が見られます。また、平岸小学校などの教育機関も、平岸村の歴史を伝えています。

参考文献

札幌市教育委員会 編『新札幌市史』札幌市、1986年-2008年。
伴野卓磨: “平岸の歴史を訪ねて”. 道新りんごステーション。 北海道新聞永田販売所。

関連文献

金山セイ子(口述) 著、下本村農事実行組合 編『平岸村開拓史』
澤田誠一 編『平岸百拾年』平岸百拾年記念協賛会、1981年10月。
澤田誠一『平岸村』北海道新聞社、2005年10月。

関連項目

平岸 - 現在の北海道札幌市豊平区平岸。旧・平岸村の一部。
豊平区 - 現在の北海道札幌市豊平区。旧・平岸村の一部を含む。
南区 - 現在の北海道札幌市南区。旧・平岸村の一部を含む。
平岸通 - 旧・平岸街道を基礎とする。
平岸リンゴ - 名産だった。
美泉定山 - 僧侶。定山渓（常山渓）の由来となり、平岸街道の整備にも力を尽くしたという。
澤田誠一 - 郷土史誌『平岸百拾年』の編者、小説『平岸村』の著者。

平岸村は、札幌市の発展の礎となった地域の一つであり、その歴史と文化は今もなお、地域に息づいています。

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