平成23年の大雪

概要

2010年末から2011年初頭にかけて、日本各地で記録的な大雪が発生しました。特に日本海側では、顕著な降雪量となり、各地で甚大な被害が発生しました。この雪害は、正式な名称はないものの、「北陸豪雪」や「山陰豪雪」と呼ばれることがあります。

2010年12月下旬までは、全国的に気温の変動が激しく、冬型の気圧配置も安定しませんでした。しかし、12月23日頃から気温が低下し始め、25日には日本海側で大雪となりました。福島県会津若松市では、25日に94cmの降雪を記録し、積雪は95cmに達しました。これは1980年から1981年の五六豪雪以来の記録的な大雪でした。さらに、翌26日には26cmの降雪があり、積雪は観測史上最多タイの115cmとなりました。この冬型の気圧配置は27日には落ち着きましたが、31日には山陰地方を中心に再び大雪となり、鳥取市で50cm、米子市で最大76cm、境港市で70cm、松江市で51cmの積雪を記録しました。年が明けた1月1日には大雪は収まり、寒波も2日にはピークを超えましたが、その後も低温と降雪は続きました。

2011年1月16日には、名古屋市でも11cmの積雪を観測。1月25日頃からは、北陸地方を中心に再び大雪となり、31日頃にピークを迎えました。この期間の最深積雪は、富山市で77cm、金沢市で64cmでしたが、福井市では119cmと、25年ぶりに1メートルを超える積雪を記録しました。これらの被害に対して、被災した自治体からは激甚災害指定の要望が出されましたが、政府は「激甚災害指定は困難」との見解を示し、指定は見送られました。

2月には少雪と高温が顕著となり、12月から2月を通して北日本では小雪、東日本では平年並み、西日本では平年を上回る降雪と、地域差が大きくなりました。しかし、3月に入ると再び低温となり、春の訪れは遅れました。シベリア高気圧の影響で、3月3日～10日、15日～16日、23日～26日と、周期的に強い冬型の気圧配置となり、関東以西の太平洋側でも降雪や凍結が観測されました。特に、15日と23日からの寒気は、季節外れの強さとなりました。

記録

この雪害では、各地で記録的な降雪や積雪が観測されました。

12月
2地点で、12月としての降雪の深さ月合計値を更新しました。
広尾町（123cm→158cm）
鹿児島市（11cm→25cm）
7地点で、12月としての最深積雪を更新しました。
羽幌町（120cm→122cm）
広尾町（73cm→94cm）
会津若松市（93cm→115cm）
境港市（62cm→70cm）
米子市（41cm→76cm）
長崎市（9cm→11cm）
鹿児島市（11cm→22cm）

1月
2地点で、1月としての平均気温を低い方から更新しました。2地点でタイ記録となりました。
西之表市（8.4℃→8.3℃）
和泊町（14.5℃→14.0℃）
タイ記録：四日市市（2.5℃）、上屋久町（8.4℃）
2地点で、1月としての降雪の深さ月合計値を更新しました。1地点でタイ記録となりました。
室蘭市（89cm→94cm）
酒田市（193cm→208cm）
タイ記録：むつ市（227cm）
1地点で、1月としての最深積雪を更新しました。
米子市（74cm→89cm）
アメダス観測所でも、気象官庁を除く224地点中36地点で1月としての最深積雪を更新しました。1地点でタイ記録となりました。
北海道：新篠津（138cm→149cm）、石狩（135cm→137cm）、大沼（77cm→90cm）、鶉（102cm→108cm）
秋田県：鹿角（85cm→100cm）、本荘（73cm→74cm）、横手（154cm→191cm）、矢島（129cm→177cm）、湯沢（113cm→172cm）、湯ノ岱（156cm→189cm）
岩手県：奥中山（85cm→110cm）、葛巻（96cm→114cm）、岩手松尾（61cm→72cm）、区界（103cm→105cm）、遠野（44cm→45cm）、北上（49cm→60cm）、湯田（210cm、タイ記録）
山形県：金山 (154cm→196cm）、向町（185cm→201cm）、櫛引（122cm→129cm）
富山県：氷見（99cm→112cm）
石川県：七尾（60cm→74cm）
福井県：武生（92cm→116cm）、九頭竜（234cm→251cm）、今庄（232cm→244cm）
滋賀県：柳ヶ瀬（210cm→249cm）
京都府：峰山（90cm→110cm）
岡山県：上長田（116cm→137cm）、今岡（42cm→47cm）
広島県：高野（138cm→161cm）、八幡（182cm→206cm）、大朝（58cm→104cm）
鳥取県：大山（244cm→266cm）、智頭（86cm→87cm）
島根県：赤名（104cm→152cm）、瑞穂（59cm→91cm）
アメダスを含む22地点で、最深積雪が最大となりました。2地点でタイ記録となりました。
北海道：森（77cm→81cm）
秋田県：鹿角（101cm→102cm）、横手（176cm→192cm）、矢島（171cm→177cm）、湯沢（143cm→175cm）、湯ノ岱（180cm→200cm）
岩手県：葛巻（109cm→114cm）、岩手松尾（62cm→75cm）、北上（58cm→68cm）
山形県：向町（205cm→212cm）、櫛引（129cm→131cm）
富山県：氷見（99cm→112cm）
石川県：七尾（72cm→74cm）
福井県：武生（92cm→116cm）、今庄（236cm→244cm）
滋賀県：柳ヶ瀬（249cm、タイ記録）
京都府：峰山（102cm→110cm）
岡山県：上長田（125cm→137cm）
広島県：八幡（182cm→207cm）、大朝（89cm→104cm）
鳥取県：米子（80cm→89cm）
島根県：赤名（134cm→152cm）、瑞穂（84cm→91cm）

影響

この大雪は、各地で甚大な被害をもたらしました。

山陰地方

島根県松江市の日本海側などでは、孤立集落が発生しました。

停電

鳥取県米子市では、中国電力の余子支線の一部で鉄塔折損などの設備被害が発生し、2011年1月2日に5300世帯が停電しました。

交通

年末年始に豪雪が発生したため、鉄道や道路の交通が大きく混乱し、帰省ラッシュに大きな影響が出ました。

2010年12月31日15時40分頃、鳥取県東伯郡琴浦町から大山町間の国道9号でタンクローリーの事故が発生し、約1000台の車が立ち往生する大渋滞が発生しました。この渋滞は一時約25kmに及び、解消までに2日を要しました。陸上自衛隊の出動や緊急避難所の設置などが行われました。
2010年12月31日16時頃、鳥取県大山町の山陰本線で、積雪による倒木のため特急列車が立ち往生しました。復旧には34時間を要しました。
2010年12月31日、日本航空では37便、全日空グループでは41便が欠航し、合計で5400人に影響が出ました。東海道・山陽新幹線でも上下225本に遅れが生じ、約22万人に影響がありました。
米子空港は、2011年1月1日と2日は除雪が間に合わず閉鎖され、3日午後に運行を再開しました。

漁業

漁港に係留されていた船が、雪の重みで369隻（鳥取県264隻、島根県105隻）沈没・転覆しました。

北陸地方

行政: 新潟県魚沼市入広瀬では、2011年1月27日の積雪が343cmに達し、1月としては25年ぶりの大雪となりました。魚沼市を含む4市で災害救助法などの基準を超える積雪となったため、5年ぶりに豪雪対策本部が設置されました。また、新潟県と魚沼市は、2月2日に陸上自衛隊に対し、魚沼市への災害派遣を要請しました。富山県では、1981年の五六豪雪以来30年ぶりの大雪となり、1984年以来27年ぶりに緊急の雪害対策会議を開きました。
交通: 2011年1月31日には、富山地方鉄道で除雪パトロール車が脱線しました。JR西日本では、金沢支社管内全区間で終日運休となりました。また、特急列車が豪雪のため立ち往生し、大幅な遅延が発生しました。

東北地方

行政: 秋田県横手市では、大雪のため市民生活に支障が出ているとして雪害対策本部が設置され、臨時災害放送局が開局しました。横手市では、除排雪作業を進めるために公共工事の中止命令が出され、また、空き家の倒壊が相次いだため、空き家の雪下ろしを求める条例が制定されました。福島県の国道49号では、会津若松市と猪苗代町の間などで通行止めとなり、約350台の車が立ち往生しました。
* 農業: 横手市や湯沢市などでは、リンゴなどの農業被害が多発しました。

この豪雪は、広範囲にわたり、人々の生活に大きな影響を与えました。

もう一度検索