臨時災害放送局

臨時災害放送局の概要

臨時災害放送局は、大規模な自然災害発生時、被災地域への情報伝達を迅速に行うため、開設される臨時の放送局です。放送法に基づき、災害による被害軽減に資する情報を提供することを目的としています。地震、豪雨、洪水などの災害発生時には、市町村などが免許人となり、FM放送を用いて、避難情報、救援物資情報、ライフライン復旧状況など、被災者にとって必要不可欠な情報を発信します。

開設の経緯と法的根拠

1995年の阪神・淡路大震災を契機に、災害時における情報伝達の重要性から創設されました。放送法および関連規則に基づき、臨時かつ一時的な目的のための放送として位置付けられています。免許取得は口頭申請で迅速に行われ、災害の状況に応じて、空中線電力や放送期間も柔軟に決定されます。

免許と技術的要件

臨時災害放送局は、主にFM放送（超短波放送）を用います。AM放送（中波放送）は、電波伝搬の特性や国際調整の必要性から、制度化されていません。免許人は原則として市町村（広域連合を含む）となり、被災地域の状況に応じて、必要最小限の空中線電力で免許が交付されます。空中線電力は原則100W以下と定められています。

地上基幹放送局であるため、第二級陸上無線技術士以上の無線従事者の配置が義務付けられています。通常、地上基幹放送局の免許取得には、予備免許取得と落成検査が必要ですが、災害の緊急性を鑑み、これらの手続きは簡素化されます。しかし、後日速やかに申請書を提出する必要があり、状況によっては落成検査が免除されることもあります。手数料についても、災害による被害状況に応じて免除される場合があります。

呼出符号は、他の臨時放送局と同様に、JOYZ＃＊-FMまたはJOYZ＃＊＊-FMの形式で付与されます。有効期間は、放送の目的を達成するために必要な期間とされ、最長5年以内とされています。送信機は、総合通信局や既存の放送事業者、災害対策支援団体などが保有するものを利用することが多く、地方公共団体が保有するケースは少ないです。

運用と費用

運営費用は、原則として開設した市町村が負担します。総合通信局は送信機を無償で貸与します。電波利用料は免除されます。災害発生時は、市町村が人員を確保することが困難なため、多くの場合、既存の放送事業者や民間団体に業務を委託して運用されます。放送時間や内容についても、厳格な制限はなく、災害関連情報に加え、音楽や娯楽番組なども放送される場合があります。

CM放送については、以前は禁止されているという誤解がありましたが、現在は制度上禁止されていません。ただし、公平性を考慮し、市町村が慎重に判断する必要があります。コミュニティ放送局が臨時災害放送局を開設する際は、免許人が異なるため、コミュニティ放送局のCMをそのまま流すことはできません。

定期検査

定期検査は、落成検査と同様に、臨時災害放送局であっても免除されません。親局は1年、中継局は5年毎に定期検査を受ける必要があります。ただし、最初の定期検査の時期は、総務大臣又は総合通信局長が指定します。

事例と類例

2019年11月までに、54局以上の臨時災害放送局が開設されています。過去の事例としては、1991年の雲仙普賢岳噴火の際にNHK長崎放送局が開設した臨時放送局などが挙げられます。

まとめ

臨時災害放送局は、大規模災害発生時の被災者支援に不可欠な役割を果たす、重要なインフラです。迅速な情報伝達と円滑な運用のため、法的枠組みと技術的な整備が重要です。今後、災害対策の一環として、その役割はますます重要になっていくと考えられます。

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