平沼弥太郎

平沼 弥太郎（ひらぬま やたろう）

1892年（明治25年）6月12日、現在の埼玉県飯能市にあたる秩父郡名栗村に生まれました。父は山林地主の平沼源一郎です。彌太郎は、林業家、実業家、そして政治家として日本の発展に貢献しました。

1912年（明治45年）に京華中学学校を卒業後、父の跡を継いで家業である山林業に携わるようになります。この分野で早くから頭角を現し、合資会社平沼材木店の代表社員を務めたほか、戦時統制下にあった埼玉県木材の社長に就任。さらに、埼玉県山林会副会長、全国山林会連合会常任幹事、埼玉県森林組合連合会会長、中央林業協会理事など、多くの要職を歴任し、林業界の発展に貢献しました。

実業界では、金融分野を中心に活躍しました。飯能銀行会長を経て、埼玉銀行の頭取に就任。頭取在任中は、不良債権の回収や組織の改革、経営の刷新に積極的に取り組みました。しかし、1961年（昭和36年）、武州鉄道汚職事件に関連して、頭取を退き相談役に就任することとなりました。このほか、名栗水電の社長や経済団体連合会の理事なども務め、幅広い経済活動に関与しました。

政治の舞台にも進出し、1931年（昭和6年）には地元の名栗村の村長に就任。その後、埼玉県会議員としても地方政治に尽力しました。戦後の1947年（昭和22年）4月に行われた第1回参議院議員通常選挙では、埼玉県地方区から日本自由党の候補として出馬し当選。1期にわたり参議院議員を務め、この間、参議院大蔵委員長として国政にも深く関わりました。

その功績に対し、1965年（昭和40年）秋には勲三等旭日中綬章を受章しています。

平沼弥太郎は、多岐にわたる活動の傍ら、埼玉県飯能市にある鳥居観音の開基者としても知られています。これは、彼が地域の文化や信仰にも深い関心を持っていたことを示すエピソードです。

家族としては、父・平沼源一郎は地主でした。妹の須美子は東京大学医学部卒業の柳川華吉（麹町病院院長）に嫁ぎ、妹の喜久子は東京大学工学部卒業で海軍兵技中佐の上野貞亮と結婚しました。貞亮の義弟には古荘四郎彦がいます。息子の平沼康彦は、埼玉トヨペットの社長を務めました。

主な著作には、『桐江国外膝栗毛』（1977年）、『米寿までの歩み』（1980年）があります。

1985年（昭和60年）8月12日に93歳で死去しました。その死没日をもって、正八位から正五位に叙されました。

平沼弥太郎は、家業である林業を起点に、金融、政治といった様々な分野で要職を歴任し、特に地元埼玉県の経済や林業の振興、地域社会の発展に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。

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