平経正

平経正（たいらのつねまさ）は、平安時代末期に活躍した平家一門の武将であり、歌人としてもその名を残しています。平経盛の長男として生まれ、平敦盛の兄にあたり、平清盛の甥という血筋です。

平家の中でも特に優れた才能を持つ人物として知られ、歌人としての活動が目立ちます。彼の家集である「経正朝臣集」は、その才能を物語る貴重な資料です。また、平安貴族が愛好した楽器である琵琶の名手としても名を馳せました。藤原俊成や仁和寺の覚性法親王といった文化人との交流が深く、特に覚性法親王からは幼少期を仁和寺で過ごした縁もあり、その音楽の才能を高く評価され、名器『青山』を授かるなど、特別な寵愛を受けました。

寿永2年（1183年）、平家が都落ちをする際、経正は仁和寺に駆けつけ、拝領した大切な琵琶『青山』を返上します。この時、彼は歌を詠み、その別れを惜しんだという逸話は、『平家物語』の「経正都落」や『源平盛衰記』の「経正仁和寺宮ヘ参リシ事」の条に詳しく描かれています。このエピソードは、彼の繊細な心と文化への深い愛着を今に伝えるものです。

寿永3年（1184年）、一ノ谷の戦いにおいて、経正は河越重房の手勢によって討ち取られ、戦死を遂げます。公式には確認されている子女はいませんが、後世になり生嶋氏が平経正の子孫であると主張しています。また、能の演目の一つである『経政』は、彼の生涯を題材にした修羅物として上演され、その悲劇的な運命が描かれています。

経正の末裔とされる生島氏は、桂宮の諸大夫を務めていました。このことから、彼の血筋は後世にもつながっていたと考えられます。

平経正は、武将としての側面だけでなく、歌人、琵琶の名手として文化的な側面も持ち合わせた人物でした。彼の生涯は、平家物語などの歴史物語や能などの伝統芸能に描かれ、その悲劇的な運命と才能は、現代にも語り継がれています。

関連事項

平家物語
能『経政』

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