平経盛

平経盛：平家の武将、歌人としての顔も持つ生涯

平経盛は、平安時代末期を代表する平氏の一族で、平忠盛の三男、そして平清盛の異母弟にあたります。平敦盛など、複数の男子をもうけたことでも知られています。兄である清盛に従い、保元・平治の乱といった、時代の転換期を彩る主要な戦乱に参戦しました。

平治の乱における活躍と政治的活動

平治の乱では、乱の首謀者である藤原信頼を仁和寺に追い詰める過程で重要な役割を果たし、宮廷の警備や反乱鎮圧に貢献しました。しかし、母方の身分の影響からか、官位昇進は異母兄弟である教盛や頼盛に比べて遅れ、目立った政治活動は生涯を通じて限られていました。

歴史研究家の見解によれば、保元の乱では清盛と共に戦ったものの、母方の叔父が崇徳上皇側についたこと、また、藤原頼長の子である藤原師長と親交があったことなどから、平家内部での立場は必ずしも盤石ではなかった可能性が指摘されています。さらに、後白河法皇が経盛を積極的に自らの側近に迎え入れようとしていたことからも、平清盛らとの関係は複雑で、円滑ではなかった面もあったのではないかと推測されています。

歌人としての才能と華麗な歌壇生活

政治的な活動が限られていた一方で、経盛は父・忠盛から受け継いだ歌の才能を遺憾なく発揮しました。守覚法親王の仁和寺歌会や二条天皇の内裏歌会など、当時の著名な歌会に数多く参加し、自らも歌会を催すなど、歌壇の中心人物として活躍しました。

特に、太皇太后・藤原多子の宮職を長年務めたことで、歌壇の中枢を担っていた徳大寺家の人々や、女流歌人など、多くの歌人との交流を深めました。彼の人脈には、二条天皇や藤原多子をはじめ、藤原頼長ゆかりの人物も多く含まれており、保元の乱で流罪となった者も帰京後に経盛の歌会に参加するなど、歌壇における彼の影響力の大きさが窺えます。

その才能は広く認められ、『千載集』に「よみ人知らず」として1首、『新勅撰和歌集』以降の勅撰集に12首もの歌が採録されています。また、彼自身の歌集『経盛集』も存在したと伝わっています。

平家滅亡と最期

寿永2年（1183年）7月、平家一門が都落ちすると、経盛も西国へと逃れました。そして、元暦元年（1184年）2月の一ノ谷の戦いでは、多くの息子たちを失うという悲劇に見舞われます。

その後、元暦2年（1185年）3月、壇ノ浦の戦いで平家は滅亡し、経盛は弟の教盛と共に、海に身を投げて果てました。享年62歳（または61歳）でした。

官歴

経盛の官歴は以下の通りです。（日付は旧暦）

久安6年（1150年）6月25日：従五位下
保元元年（1156年）9月17日：安芸守、閏9月22日：常陸介
保元2年（1157年）10月22日：従五位上
保元3年（1158年）8月10日：常陸介を辞任
平治元年（1159年）12月27日：伊賀守
永暦元年（1160年）4月3日：正五位下、4月7日：太皇太后宮権大進兼任、8月14日：従四位下
応保元年（1161年）9月15日：左馬権頭、10月8日：従四位上、10月19日：若狭守兼任
応保2年（1162年）7月17日：太皇太后宮亮兼任
長寛元年（1163年）12月20日：正四位下
永万元年（1165年）12月21日：左馬権頭を辞任
永万2年（1166年）正月12日：若狭守を重任
仁安3年（1168年）8月12日：内蔵頭兼任
嘉応2年（1170年）正月18日：若狭守を辞任、12月30日：従三位
嘉応3年（1171年）正月18日：讃岐権守兼任
安元元年（1175年）：讃岐権守を辞任
安元2年（1176年）2月5日：太皇太后宮亮を辞任
安元3年（1177年）正月24日：正三位
治承2年（1178年）正月28日：太皇太后宮権大夫
治承3年（1179年）11月17日：修理大夫兼任
養和元年（1181年）12月4日：参議
養和2年（1182年）3月8日：備中権守兼任
寿永2年（1183年）8月6日：解官

関連作品

経盛は、数々の歴史ドラマで取り上げられています。代表的な作品として、『新・平家物語』（1972年、NHK大河ドラマ）や『平清盛』（2012年、NHK大河ドラマ）などがあります。

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