平賀敏

平賀敏：明治期の多才な実業家と官僚

平賀敏（1859-1931）は、明治時代を代表する実業家であり、官僚としての実績も残した人物です。その生涯は、激動の時代を駆け抜けた波乱に満ちたものでした。幕府旗本の子として江戸に生まれ、幼少期に両親を亡くした彼は、静岡藩に移り住み、勉学に励みます。静岡師範学校首席卒業後、東京へ進出し、宮内省勤務を経て、三井銀行に入行。名古屋、大阪両支店長として辣腕を振るい、後に阪急電鉄社長小林一三氏を部下に抱えていました。

三井銀行退行後は、中東製革、桜セメント、帝国鉱泉（後の三ツ矢サイダー）といった企業を次々と興し、社長に就任。特に桜セメントでは、小林一三氏が経営に関わっていた箕面有馬電気軌道（阪急電鉄の前身）を支援するなど、人脈を活かした経営手腕を発揮しました。

その後、北浜銀行事件の影響で経営難に陥っていた藤本ビルブローカー銀行（後の大和証券）の再建に乗り出し、社長に就任。さらに、水力発電事業にも進出し、播磨水電、両備水電といった企業の経営にも携わりました。

平賀敏の事業活動は多岐に渡り、日本簡易火災保険社長、日本徴兵保険監査役、亜鉛乾鉱会長、白山水電監査役、岡山電燈会長など数々の要職を歴任。その手腕は、関西財界のみならず、日本経済全体に大きな影響を与えました。

晩年は病に倒れ、奈良で療養生活を送った後、1931年に狭心症のため死去しました。

平賀家の人々

平賀敏の多様な事業活動は、彼の才能と人脈の広さを示していますが、その影響は、彼の子孫にも及んでいます。

長男・平賀太郎: 工学士。東京帝国大学工学部電気工学科卒業後、フランスに留学するも病により帰国。
次男・井上二郎: 慶應義塾大学卒業後、三菱商事に入社。実業家井上周の娘婿となりました。
三男・平賀毅: 富士火災海上保険（現AIG損害保険株式会社）社長を歴任しました。
四男・平賀練吉: 東京帝国大学農学部卒業後、アマゾン青年開拓団副団長としてブラジルへ移民。アマゾン川中流域の開拓に尽力し、「アマゾン移民日本人の父」と呼ばれるほど貢献しました。第五回吉川英治文化賞を受賞しています。
六女・富士子: 神戸女学院出身。小林一三の長男・小林富佐雄と結婚しました。
五男・平賀貞愛: 俵孫一を岳父に持つ。

平賀家の各メンバーは、それぞれ異なる分野で活躍し、平賀敏の遺志を受け継いでいます。

まとめ

平賀敏は、明治時代の激動期に、官僚、実業家として、そして教育者として、多大な功績を残しました。その生涯は、困難を乗り越え、常に挑戦を続けた、真の開拓者の物語と言えるでしょう。彼の功績は、現代においても、日本の経済発展に貢献した重要な人物として記憶されています。数々の企業経営や社会貢献活動を通して、平賀敏は日本の近代化に大きく貢献した一人として、歴史にその名を刻んでいます。 彼のリーダーシップ、そして多様な事業への関与は、現代のビジネスパーソンにとっても貴重な教訓となるでしょう。

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