幹部候補生 (自衛隊)

自衛隊の幹部候補生について

自衛隊における幹部候補生とは、将来の幹部自衛官となるために、教育・訓練を受けている学生のことを指します。いわゆる士官候補生であり、曹長（陸曹長、海曹長、空曹長）の階級が指定されますが、同じ曹長でも幹部候補生ではない者よりも上位とされます。

幹部候補生としての教育課程を修了すると、3尉（大学院修士課程修了者で院卒者試験に合格した者、医科・歯科幹部候補生、6年制卒の薬剤科幹部候補生は2尉）に昇任します。なお、平成27年度の応募数は7334人と、前年度比で13.8％減少しています。

概要

幹部候補生は、初級幹部自衛官を養成する課程であり、防衛大学校や防衛医科大学校の出身者、航空学生や陸曹航空操縦学生課程の修了者の他、一般隊員の部内選抜、一般大学卒業者や大学院修士課程修了者の外部募集によって選抜されます。

一般からの募集コースは、「一般幹部候補生」「歯科幹部候補生」「薬剤科幹部候補生」の3つがあります。それぞれの自衛隊に幹部候補生学校が設けられており、養成期間は課程によって数週間から1年と異なります。

制服

幹部候補生の制服は、一般の曹長と3尉（三等陸尉、三等海尉、三等空尉）の両方の特徴を併せ持っています。

陸上自衛隊: 幹部と同様の袖章と金の正帽顎紐を着用し、階級章の上部に幹部候補生徽章をつけます。2017年の制服変更により、肩章が幹部用となり、ズボンにも幹部用の側章が入るようになりました。
海上自衛隊: 正帽帽章は海曹のものですが、顎紐は金色です。階級章は一般の海曹長とは異なる三等海尉に類似したものを着用します。夏用の靴は、以前は海曹士と同じ黒色でしたが、米海軍の候補生に合わせて白色になりました。
航空自衛隊: 幹部と同様に正帽顎紐は銀色で、階級章の上部に幹部候補生徽章をつけます。

陸上自衛隊の幹部候補生の区分

陸上自衛隊の幹部候補生の期別は、西暦の下二桁に当該任用区分の記号を付して呼称します。

一般幹部候補生:
防衛大学校卒業者（B）
一般大学卒業者（U、現職から任用された場合はU'）
部内選抜試験合格者（I）
陸曹航空操縦学生修了者（A）
音楽要員
医科幹部候補生（M）
歯科幹部候補生（D）
看護科幹部候補生（NB）
薬剤科幹部候補生（P）
看護師資格保有者（N）
3尉候補者（SLC）

海上自衛隊の幹部候補生の区分

海上自衛隊では、幹部候補生は3つの学生隊に分かれて教育を受けます。

第1学生隊
一般幹部候補生課程（1課程）：防衛大学校卒業者（教育期間は約1年間）
一般幹部候補生課程（2課程）：一般大学卒業者、技術幹部候補生、薬剤科幹部候補生（教育期間は約1年間）
医科歯科看護科幹部候補生課程：防衛医科大学校及び歯学部卒業者の医科幹部候補生、歯科幹部候補生、看護科幹部候補生（教育期間は約2か月）
公募幹部課程学生：キャリア採用幹部（旧技術海上幹部）採用者（教育期間は約2か月）
第2学生隊
飛行幹部候補生：航空学生（海上要員）として入隊し、飛行教育を受け航空徽章を取得した者（教育期間は約6か月）
一般幹部候補生（部内課程）：部隊等で勤務している海曹から選抜された者（教育期間は約9か月）
第3学生隊
幹部予定者課程：准海尉及び海曹長から選抜された者（教育期間は約4か月）

海上自衛隊の幹部候補生教育は、1953年に一般大学出身者から始まり、1956年から江田島で開始されました。1957年には防衛大学校第1期生が入校しています。

航空自衛隊の幹部候補生の区分

航空自衛隊の幹部候補生の区分は以下の通りです。

一般幹部候補生
防衛大学校卒業者（B）：約6ヶ月
一般大学卒業者（U）：約12ヶ月
部内選抜試験合格者（I）：約8ヶ月
（令和2年度より、防大及び一般課程(BU)は9ヶ月の教育期間で試行中）
飛行幹部候補生（A）: 約6ヶ月
航空学生（航空要員）課程修了者
年二回に分割して課程を実施(A1, A2)
医科歯科看護科幹部候補生（MDN）: 約2ヶ月
防衛医科大学校等卒業者
3尉候補者課程（S）: 約3ヶ月
准尉・曹長より選考選抜

幹部候補生の種類

幹部候補生は、それぞれの自衛隊で以下のような職域に分かれます。

陸上自衛隊:
一般幹部候補生（音楽科、衛生科以外）
一般幹部候補生（音楽要員）
医科、歯科、看護科、薬剤科幹部候補生
海上自衛隊:
一般幹部候補生（技術、飛行、音楽、医学科、歯学科、薬剤科以外）
一般幹部候補生（音楽要員）
一般幹部候補生（飛行要員）
医科、歯科、看護科、薬剤科幹部候補生
技術海上幹部候補生
航空自衛隊
一般幹部候補生（飛行、音楽、医学科、歯学科、薬剤科以外）
一般幹部候補生（飛行要員）
一般幹部候補生（音楽要員）
医学科、歯学科、看護科、薬剤科幹部候補生
技術航空幹部候補生

対象者

幹部候補生の対象者は、以下の通りです。

防衛大学校卒業者
部外選抜試験：22歳以上26歳未満の者
部内選抜試験：25歳以上42歳未満で、以下のいずれかの条件を満たす者（受験回数は4回まで、3尉候補者は3回まで）
曹長または1曹の階級にある者
2曹昇任後1年を経過した者（陸自看護学生として採用された者は任用3年経過後）
3曹任用後4年を経過した25歳以上の者
医学科、歯学科、薬剤科幹部候補生：
医科：20歳以上30歳未満
歯科：20歳以上30歳未満
薬剤科：20歳以上28歳未満
陸曹航空操縦学生課程の修了者
航空学生の修了者（飛行要員）
大卒で業務経験のある社会人を対象としたキャリア採用幹部（旧・技術海上幹部・技術航空幹部）

幹部候補生学校卒業後の進路

幹部候補生学校を卒業すると、3尉（または2尉）に昇任し、各部隊や術科学校に配属されます。ただし、医科、歯科、薬剤科幹部候補生は、国家試験に合格する必要があります。

昇任後は各種学校で教育を受け、1尉まではほぼ横並びに昇任します。3佐以上の昇任にはAOC課程の修了が必要であり、1佐以上の高級幹部になるには、指揮幕僚課程に進む必要があります。昇任の速さは、幹部候補生学校の席次や勤務成績、指揮幕僚課程の席次によって左右されます。

航空学生課程の修了者からなる飛行幹部は、基本的に原隊に復帰し、機長となる資格を得ます。一般幹部とは異なり、専任の操縦士として養成されるため、昇進は3尉までとなることが多いです。一定数は、民間の操縦士として斡旋される割愛制度により、定年前に退職します。

卒業式は、入校者の区分ごとに行われます。

脚注・出典

“幹部候補者たる自衛官の任用等に関する訓令（昭和33年7月23日防衛庁訓令第63号）” (PDF). 防衛省情報検索サービス. 防衛省 (2020年8月28日). 2023年5月25日閲覧。

関連項目

自衛官
士官候補生
見習士官
幹部候補生 (日本軍)
陸上自衛隊幹部候補生学校
海上自衛隊幹部候補生学校
航空自衛隊幹部候補生学校
技術曹
特技兵

外部リンク

* 自衛官募集（防衛省・自衛隊ホームページ）

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