幾山岳

幾山岳（いくさんだけ）

幾山岳は、日本の北海道において、上川郡下川町と紋別郡滝上町という二つの町に境界線を引くように位置する山です。その標高は1,030.9メートルを測ります。この山の頂には、国土の測量基準点となる二等三角点「幾山岳」が設置されています。

山の概要

この山は、北海道の広大な山並みを構成する北見山地の主要な尾根筋、すなわち主稜線上に連なっています。幾山岳の北方向には、ウエンシリ岳やポロナイポ岳といった山々がそびえ立っています。また、水系という観点から見ると、幾山岳は名寄川の最も奥まった源流部の一つであるユクヤシン沢川の源頭にあたります。これは、この山が周辺地域の水源として重要な役割を果たしていることを示しています。

山名の由来について

「幾山岳」という名前の起源は、この山を源流とするユクヤシン沢川のかつての呼び名「ユクシャン」にあるとされています。アイヌの人々の言葉では、「ユクシャン」とは「鹿（ゆく）が下る（しゃん）沢」という意味を持っています。これは、かつてこの沢が鹿の通り道であったり、狩猟において鹿を追って下る場所であったりしたことを物語っていると考えられます。しかし、いつの頃からか、この沢の名前は「ユクシャン」から「ユクヤシン」へと、文字の並びが変化してしまったようです。

登山

幾山岳は、一般的な登山道が整備されていないため、手軽に登れる山ではありません。この山を目指す際の主要なルートとして知られているのは、渚滑川の支流であるサクルー川に合流する原子川に沿って通る原子林道を利用する方法です。このルートでは、林道を進んだ後、途中で上原子川へと入ります。そして、上原子川と他の沢との合流点（出合）から山の尾根に取り付き、そこから山頂を目指すことになります。

しかし、このルートは整備された登山道ではなく、自然のままに近い状態です。そのため、歩きやすい道が続いているわけではなく、進行を妨げる密な藪（やぶ）を漕いで進まなければならない箇所が数多く存在します。また、地形が不明瞭であったり、目印が少なかったりするため、地図やコンパス、GPSなどを用いた正確なルートファインディング能力が非常に重要になります。こうした困難が伴うことから、幾山岳への登山は、十分な準備と経験を持つ者でなければ容易ではありません。整備された道がないゆえに、原始的な自然環境が色濃く残されているのが特徴と言えるでしょう。

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