広井女王

広井女王（ひろいじょおう）は、平安時代前期に活躍した女官であり、その生涯は多くの謎に包まれています。生年は不詳ですが、貞観元年（859年）に80歳余りで亡くなったと伝えられています。彼女は天武天皇の皇子である長親王を祖とする高貴な家柄に生まれ、父は従五位上の雄河王です。

経歴

広井女王は、天長8年（831年）に従五位下となり、尚膳として宮中に仕え始めました。その後、嘉祥3年（850年）には従四位上に昇進し、権典侍に任じられます。仁寿4年（854年）には従三位に叙せられ、天安3年（859年）には尚侍という重要な役職に就きました。しかし、その年の10月には亡くなっており、その生涯は宮中での奉仕に捧げられたと言えるでしょう。

薨伝によると、広井女王は幼い頃から徳を修め、礼儀正しい人物であったとされています。特に歌の才能に優れ、中でも催馬楽（さいばら）という宮廷音楽の歌唱に長けていました。その評判は高く、多くの公卿や若い音楽愛好家たちが彼女に教えを請いに来たほどでした。

文化的な貢献

広井女王は、音楽の才能だけでなく、文化的な伝承にも深く関わっていました。『和琴血脈』によると、広井女王は嵯峨天皇から和琴の秘伝を伝授され、それを仁明天皇や源信へと伝えたとされています。また、『河海抄』によれば、嵯峨天皇から広井女王へと和琴の曲が伝授され、一時中断した後に慈賀善門から仁明天皇と源信に伝えられたという説もあります。これらの記録から、広井女王が和琴という楽器の伝承においても重要な役割を果たしていたことが窺えます。

系譜

広井女王の家系は、天武天皇から始まり、長親王、栗栖王、長田王、広川王、そして雄河王を経て広井女王へと繋がっています。この系譜からも、彼女が天皇家と深い繋がりを持っていたことがわかります。

広井女王の生涯は、宮廷での奉仕と音楽への情熱に彩られていました。彼女の存在は、平安時代の文化的な豊かさを象徴するものと言えるでしょう。彼女が伝えた催馬楽や和琴の音楽は、後世にまで影響を与え続けました。その功績は、日本の音楽史においても特筆されるべきものです。

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