広南従四位白象

広南従四位白象：江戸を沸かせた異国の珍獣

広南従四位白象（こうなんじゅしいはくぞう）は、江戸時代中期、享保年間に日本にやってきたベトナム産のオスのアジアゾウです。時の将軍、徳川吉宗が海外の文物への関心から輸入を命じ、日本に「象ブーム」を巻き起こしました。ここでは、その生涯と日本社会に与えた影響を詳しく解説します。

来日の背景

江戸幕府は鎖国政策をとりながらも、長崎を通じて海外との交流を সীমিত的に行っていました。徳川吉宗は実学を奨励し、海外の知識を積極的に取り入れようとします。その一環として、清国の商人に象を発注しました。これは単なる珍しい動物の輸入ではなく、海外の文化や知識に対する幕府の旺盛な好奇心の表れでした。

日本への旅

象はシャム（現在のタイ）から清国の船で長崎に運ばれました。船主は鄭大威という人物で、象の輸送には莫大な費用がかかりましたが、当時のベトナムでの象の取引価格と比較すると、非常に大きな利益が見込まれました。象はオスとメスの一頭ずつであり、国内での繁殖も期待されていました。

長崎に到着した象は、大きな突堤を築いて慎重に陸揚げされました。象使いとしてベトナム人の譚数と漂綿が同行し、清国人の通訳が彼らと幕府との間を取り持ちました。しかし、メスの象は長崎で вскореに死亡してしまいます。

オスの象は長崎で越冬した後、翌年の春に江戸に向けて出発しました。その道のりは約1,480キロメートルにも及ぶもので、74日間をかけて象は自らの足で歩きました。

街道沿いの村々には、象が通行する際の注意を促す触書が出され、騒音を立てないことや牛馬の通行を避けることなどが指示されました。象の食事として、大量の藁や笹の葉、饅頭などが用意されました。

京都での拝謁

象は各地で歓迎を受けながら京都へと向かいました。道中では足を痛めるなどのトラブルもありましたが、各地の藩主が見物に訪れました。大坂では見物人が殺到し、象が通行する通りは通行止めになったほどでした。

京都では、象は清浄華院という寺に宿泊しました。象が入京する際、位階のない動物が宮中に入るのは前例がないという問題が起こりました。そのため、朝廷は象に「従四位」の位を授け、「広南従四位白象」と称しました。

象は化粧を施され、中御門天皇に拝謁しました。天皇は象の姿に深く感動し、その心情を和歌に詠みました。また、象は天皇の祖父にあたる霊元法皇にも拝謁し、多くの人々に感銘を与えました。

江戸での人気とその後

京都を後にした象は、名古屋などを経由して江戸に到着しました。江戸でも象は熱狂的な歓迎を受け、市中を練り歩いた後、浜御殿に収容されました。将軍吉宗も象と対面し、その様子は『徳川実紀』にも記録されています。

しかし、象の飼育には多大な費用がかかり、また象が象使いを убить事件も発生しました。そのため、象は最終的に民間の百姓に払い下げられました。

払い下げられた象は、中野村で飼育されましたが見物人は減少し、エサも粗末なものになっていきました。象は病気になり、 вскореに死亡しました。遺骸は解体され、骨や牙は宝仙寺に納められました。

象ブームの影響

象の来日は、日本に大きな「象ブーム」を巻き起こしました。象に関する書籍や瓦版、版画などが多数出版され、象をモチーフにした商品が人気を博しました。また、象の糞を丸めた丸薬が売られるなど、様々な文化現象が起こりました。

現代においても、象が描かれた絵馬が神社に奉納されたり、象をデザインした商品が作られたりするなど、その影響は残っています。

広南従四位白象は、単なる珍しい動物ではなく、当時の日本社会に大きなインパクトを与えた存在でした。その生涯は、鎖国下の日本における海外文化への関心や、江戸の人々の好奇心と熱狂を сегодняに伝える貴重な историиです。

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