広島陸軍兵器補給廠

広島陸軍兵器補給廠の歴史

広島陸軍兵器補給廠は、かつて広島市南区霞町に存在した旧日本陸軍の施設です。1940年以前は「広島陸軍兵器支廠」と呼ばれていました。この施設は、帝国陸軍の武器や弾薬の集積、そして補給を担う重要な役割を担っていました。周辺には、陸軍要塞砲兵連隊や広島陸軍被服支廠、演習砲台など、他の陸軍関連施設も存在していました。

設立から移転、そして拡充

1887年（明治30年）には、大阪砲兵工廠広島派出所が基町に設置されたことが始まりです。その後、1905年（明治38年）には広島陸軍兵器支廠に昇格し、1906年（明治39年）には東新開町（現在の霞町）に移転しました。

施設の拡充はその後も進み、1914年（大正3年）には第1から第10までの兵器庫が完成し、1920年（大正9年）から第11から第17兵器庫の建設も行われました。しかし、1921年（大正10年）8月8日には火薬の爆発事故が発生し、第9兵器庫が消失するという事故も起きました。

補給廠への改称と被爆

1940年（昭和15年）には、広島陸軍兵器補給廠へと名称が変更されました。そして、1945年（昭和20年）8月6日、広島に原子爆弾が投下された際、この施設も被爆しました。建物自体の被害は軽微であったものの、多くの人員が被爆し、その後は救護所として活用されました。

戦後の変遷

終戦後、1946年（昭和21年）6月から1956年（昭和31年）まで、広島県庁舎として利用されました。その後、1957年（昭和32年）10月からは広島大学医学部の施設として使用されるようになりました。しかし、1970年代から施設の解体が始まり、最後に残っていた医学資料館として使用されていた11号館（第11兵器庫）も1999年（平成11年）に解体されました。

原爆による被災

原子爆弾投下時、補給廠は爆心から半径3.0km以内に位置しており、比治山の陰になっていたものの、爆風により半壊に近い被害を受けました。このため、勤労動員されていた修道中学校、崇徳中学校、実践高等女学校（現：広島修道大学ひろしま協創中学校・高等学校）の生徒たちが多数被爆し、死傷しました。当時の広島では、多くの学生や生徒が建物疎開などの作業に動員されていたため、このような悲劇が多発しました。被爆当時、修道中学に在学していた日本画家の平山郁夫氏も負傷者の一人です。また、被爆直後のキノコ雲を撮影した写真の一つは、この地点から動員学徒によって撮影されたものです。

現在の状況

戦後、跡地は広島県庁、そして広島大学医学部や広島大学病院が利用しました（広島大学霞キャンパス）。かつての補給廠の建物は、医学部の食堂などに転用されましたが、1970年代以降に次々と解体されました。最後まで残っていた「医学資料館」として使用されていた11号館（第11兵器庫）も1999年に解体されました。

現在では、解体時に保存された外壁の一部が修道中学・高等学校で被爆建物として展示されています。また、現在の医学資料館は取り壊されたレンガの一部を利用して復元的に建築されたレプリカです。かつての「陸軍の三廠」と呼ばれた施設のうち、当時の工場や倉庫が現状保存されている広島陸軍被服支廠や宇品陸軍糧秣支廠とは異なり、当時の施設は現存していません。

関連施設と参考文献

広島陸軍被服支廠、宇品陸軍糧秣支廠は、広島市内に所在した陸軍工廠であり、陸軍兵器補給廠と合わせて「陸軍の三廠」と呼ばれていました。

参考文献として、以下の書籍が挙げられます。

被爆建造物調査委員会（編） 『被爆50周年 ヒロシマの被爆建造物は語る - 未来への記憶』 広島平和記念資料館、1996年
山下和也・井手三千男・叶真幹 『ヒロシマをさがそう：原爆を見た建物』 西田書店、2006年　ISBN 488866434X
広島市郷土資料館 『陸軍の三廠～宇品線沿線の軍需施設～』（広島市郷土資料館調査報告書第20集） 2022年

外部リンク

広島ぶらり散歩 - ウェイバックマシン（2003年9月21日アーカイブ分） - 広島市内の被爆建物の紹介などがあります。
旧・広島陸軍兵器支廠・モニュメント - ウェイバックマシン（2008年11月18日アーカイブ分）
広島大学「医学部医学資料館」
* 中国新聞「広島大が旧陸軍兵器補給廠跡試掘調査 兵器庫の基礎や軽便鉄道跡出土」（2013年10月2日付）（2014年7月7日閲覧）

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