宇品線

宇品線：広島の歴史を刻んだ鉄路

宇品線は、かつて広島駅と宇品駅を結んでいた、日本国有鉄道の鉄道路線です。その歴史は、日清戦争の軍事輸送という背景から始まりました。

軍事路線から市民の足へ

1894年、日清戦争勃発に伴い、人員・物資輸送のため軍事専用線として宇品線は誕生しました。山陽鉄道（現・山陽本線）が広島駅まで開通したことを受け、広島駅と宇品港（現・広島港）を結ぶ役割を担い、陸軍省の委託を受けた山陽鉄道によって、わずか17日間という突貫工事で建設されました。開業後は、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争といった各戦争において、兵士や物資の輸送を支えました。

1897年からは山陽鉄道が一般旅客営業を開始し、1906年には国有化されました。しかし、1919年には旅客営業が一時廃止され、貨物専用線となります。昭和初期に入り、1930年からは芸備鉄道（現・芸備線）に委託される形で旅客営業が復活、1937年には芸備鉄道の国有化に伴い、再び国鉄の路線となりました。戦時中は、軍の規定により一般旅客の利用は制限されていました。

原爆投下後の1945年8月6日には、比較的被害の少なかった南段原駅 - 宇品駅間で被爆者の輸送が行われました。

戦後は、沿線の学校、大学病院、県庁仮庁舎、工場などへの通勤・通学の足として、また貨物輸送路線として利用されました。広島駅では、1番線ホーム東側の0番線から発着していました。

時代の変化と路線の終焉

しかし、広島市の復興が進むにつれて、県庁をはじめとする公共施設が市の中心部へ移転。広島駅 - 広島港間を結ぶ広島電鉄やバス路線との競合も激化し、宇品線の利用者は減少の一途を辿ります。その結果、営業係数は4000を超えるという、全国有数の赤字路線となってしまいました。

1966年には定期券利用者を除き、旅客営業は廃止。同時に広島駅0番線も廃止され、市販の時刻表からも姿を消しました。1972年には定期券旅客の扱いと貨物輸送も廃止され、国鉄の営業路線としての役割を終えました。

その後は、「宇品四者協定線」として、通運業者4社が東広島駅（現在の広島貨物ターミナル駅） - 宇品貨物取扱所間の貨物輸送に利用していましたが、1986年にそれも廃止されました。

路線データ

路線距離：広島駅 - 宇品駅間 5.9km
軌間：1067mm
駅数：7駅（1966年旅客営業廃止時点）
複線区間：なし（全線単線）
* 電化区間：なし（全線非電化）

廃線跡の今

宇品線の廃線跡は、現在、一部が道路や公園として整備されています。南段原駅跡付近には「宇品線公園」が設けられ、宇品線のモニュメントが設置されています。また、丹那駅と下丹那駅の跡地には、駅標を模したモニュメントが設置されています。

宇品駅部分は広島高速3号線宇品出入口となり、宇品線の遺構は高速道路建設に伴い取り壊されましたが、宇品インターチェンジ入口交差点南西側には糧秣支廠の壁の一部が保存され、記念碑が設置されています。

宇品線は、その短い生涯の中で、軍事輸送、市民の足、そして貨物輸送と、様々な役割を担ってきました。その歴史は、広島の発展とともにあり、今もなお、廃線跡という形でその面影を残しています。

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