庲降都督

庲降都督の役割とその背景

庲降都督（らいこうととく）は、三国時代の蜀漢において特に南中地域の異民族対策に特化した官職であり、主に反乱の鎮圧や民族間の調和を図るために設けられました。蜀漢の都督制度の一部として、特に辺境地域の軍政を担当し、民政も統括しながら、敵からの脅威に備える重要な役割を果たしていました。

都督制度の概要

都督という職務は、三国時代において現れ、軍事と民政の両方を統括する役割を持っていました。都督府を設置し、そこに府官を任命することで、地域の治安や生活基盤の安定を図ることが求められました。特に、蜀漢は益州のみを所有しており、そのためそれぞれの都督が担当する地域は、魏などのように広範囲にわたることは少なく、数郡程度の限られた範囲に留まっていました。

蜀漢の代表的な都督には、漢中都督・永安都督・江州都督、そして庲降都督がいます。庲降都督は主に蜀漢の南部、現代の雲南省や貴州省に当たる地域の異民族への政策を担当しました。

歴代の庲降都督

歴史上、庲降都督として任命された人物は多く、主に次のような指導者が知られています。
・鄧方（215-221）：最初の庲降都督で、安遠将軍としても知られる。
・李恢（221-231）：後任として自らを推薦した。
・張翼（231-233）：法に厳格であり、異民族との関係が難航した。
・馬忠（233-249）：安南将軍としても活躍し、反乱を抑える戦略を練った。
・張表（249-？）：後将軍として、庲降都督の職務を担った。
・閻宇（？-258）：副将に霍弋がついた。
・霍弋（258-263）：安南将軍を兼任した。

これらの指導者は、各々発揮した政策により、庲降都督としての役割を果たし、異民族との交渉や勢力拡大を図りました。

地名の解釈

「庲降」という表現の語源はやや不明確ですが、前漢の武帝の時代に匈奴を降伏させる拠点であった「受降城」に関連する可能性も指摘されています。この「庲」には、許可を与える、泊める、憩うといった意味が含まれており、行政機能を持つ前線基地の役割を示唆していると考えられます。

また、『三国志』や『晋書』には「南中都督」としても言及されていることから、庲降都督がその時代の中でどのように評価されていたのかを知る手がかりとなります。歴代の都督の駐屯地も一定しておらず、その時々の状況に応じて変動していたことは、当時の多様な政治的背景や軍事情勢を反映しています。

結論

庲降都督は、蜀漢における特異な官職として、南中地域の異民族との関係やその統治において重要な役割を果たしました。この職務を持った指導者たちは、三国時代の複雑な情勢の中で重要な位置を占め、南中の治安を維持し、国の平和を守ろうとしたのです。

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