延命寺 (今治市)

延命寺（えんめいじ）

愛媛県今治市阿方に位置する延命寺は、真言宗豊山派に属する寺院で、近見山、宝鐘院とも呼ばれています。寺の本尊は不動明王であり、四国八十八箇所の第54番札所として多くの参拝者に親しまれています。

基本情報

本尊の真言は「のうまくさんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うん たらた かんまん」であり、寺のご詠歌は「くもりなき鏡の縁とながむれば　残さず影をうつすものかな」です。また、納経印には当寺本尊および奥の院の薬師如来が刻まれています。

寺院の特色

延命寺の境内では、春に馬酔木（あせび）の花が美しく咲き誇ります。さらに、桜やつつじも多く植えられ、花の寺としても多くの訪問者を魅了しています。加えて、境内には真念の道標があり、歴史的価値を持つものとされています。

歴史の背景

延命寺は、聖武天皇の勅願のもと、養老4年（720年）に行基が不動明王を刻み、近見山の山頂に堂宇を築いて開基されたと伝えられています。その後、弘仁年間（810年 – 824年）には空海（弘法大師）が嵯峨天皇の命で寺を再興し、不動院圓明寺として命名されたことでも知られています。かつて寺は多くの坊を有し、信仰と学問の中心地でした。

著名な学僧、凝然（示観国師）によって執筆された「八宗綱要」がこの寺で知られており、後宇多天皇からも深い尊崇を受けていました。しかし、寺は再三にわたり戦火に晒され、享保12年（1727年）に現在の地に移転し、その際に築かれた庭園に植えられたツブラジイが今も存在しています。

明治時代には、神仏分離令の影響で遍路道の参拝先が変更され、寺号を延命寺と変更しました。これにより先代の名称から新たな名前へと生まれ変わりました。

境内の構成

延命寺の境内には、仁王門（山門）や総けやき造りの中門があり、また本堂には宝冠不動明王坐像が祀られています。この本尊は60年ごとに開帳されており、最近では2016年に開帳されました。さらに、大師堂では大師像を拝見できる他、薬師堂は近見山山頂にあった本尊を今も祀る場所として重要視されています。

文化財と訪問情報

今治市に指定された有形文化財、副住職の名の由来となった梵鐘や、ツブラジイなどの保存樹があります。また、寺には宿坊は存在せず、駐車場は大型車から普通車まで対応しています。交通アクセスは、JR予讃線の大西駅から路線バスが便利です。

このように、延命寺は歴史、文化、信仰が交錯する場として訪問者に感動を与え続けています。参拝の際には、あたたかい心でこの場所の持つ歴史や風情を感じ取ってほしいです。

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