延喜儀式

延喜儀式とは

延喜儀式（えんぎぎしき）は、平安時代前期の延喜年間に編纂されたとされる儀式書です。通説では、同時期に編纂された延喜格式と並行して作成されたと考えられています。『本朝法家目録文書』や『本朝書籍目録』には、全10巻で約90条の目録を持つと記録されています。

延喜儀式の内容

『北山抄』『江家次第』『中右記』といった後世の書物に、延喜儀式からの引用とされる記述が散見されます。また、藤原俊憲の『貫首秘抄』では、職務を行う上で必要な書物の一つとして挙げられています。これらのことから、延喜儀式は朝廷の儀礼に関する詳細な内容を記したものであったと推測されます。

延喜儀式を巡る諸説

しかし、延喜儀式が実際に朝廷の儀礼で用いられたことを示す確実な記録は見つかっていません。また、引用の初出が延喜年間から100年以上後の『北山抄』であることや、その後の引用が院政期の書物に集中していることから、延喜儀式の成立については様々な説が提唱されています。

貞観儀式修正説: 延喜儀式は、それ以前に存在した『貞観儀式』を部分的に修正したに過ぎないとする説。
未施行説: 完成はしたものの、実際には施行されなかったとする説。
未完成説: 編纂が途中で終わってしまったとする説。
儀礼記録説: 延喜年間に記録された儀礼に関する記述が、後世になって儀式書として認識されたとする説。

これらの説は、延喜儀式の成立過程が複雑であり、未解明な部分が多いことを示しています。

まとめ

現在、確実なことは、平安時代後期には、延喜年間に編纂あるいは記録に由来を持つ『延喜儀式』という儀式書（書物）が存在し、先例として尊重されていたということです。しかし、その成立過程や実際の運用については、未だに多くの謎が残されています。

参考文献

* 森田悌『日本古代律令法史の研究』文献出版、1986年9月。

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